2024年10月に導入された雇用権利法案(Employment Rights Bill)は、英国の雇用法に大きな影響を及ぼすとされています。
現在、この法案は上院(House of Lords)の報告段階(Report stage)にあり、年内に国王裁可(Royal Assent)を受ける見込みです。2025年7月、政府は実施計画を公表し、今後2年間で導入される改革の詳細を示しました。このロードマップには、今後予定される協議や二次立法についても触れられており、新しい規則の適用方法を定める上で重要な役割を果たすことになります。
本ニュースレターでは、今後の主要な変更のタイムラインと、雇用主が現時点で準備すべきことについてご紹介します。
段階的な改革の実施
政府は、すべての改革を一度に導入するのではなく、法案が成立する見込みの2025年末から2027年にかけて、段階的に導入する計画を採用しました。これにより、企業は制度変更に対応する期間を与えられることになります。
国王裁可時に施行される内容
法案が国王裁可を受けると、いくつかの条項が即時に施行される予定です。主な内容は以下の通りです。
- 2023年ストライキ法(Strikes (Minimum Service Levels) Act 2023)および2016年労働組合法(Trade Union Act 2016)の主要部分を廃止
- 労働者が合法的な労働争議(ストライキ)に参加したことを理由に解雇されないよう保護を付与
これらの初期改革は、雇用主と労働組合の関係における均衡を回復し、ストライキ権を保障することを目的としています。
2026年4月
2026年4月からは、より広範な改革が開始されます。主な内容は以下の通りです。
- 「雇用初日から」父親の育児休暇および無給の育児休暇を取得できる権利の導入
- 低賃金労働者がより利用しやすくなるよう、法定傷病手当(Statutory Sick Pay (SSP))規則を改正
- 雇用権利の遵守状況を監督し、執行を強化するための新たな機関、Fair Work Agencyの設立
- 集団解雇における保護通知期間を90日から180日に倍増
- 内部告発保護を拡大し、セクハラの申告も対象に追加
2026年10月
2026年10月には、次の段階の改革が実施されます。主な内容は以下の通りです。
- 契約紛争における雇用主の解雇と再雇用(fire and rehire)手法の禁止
- 雇用主に対し、職場でのセクハラ防止のために「すべての合理的措置」を講じることの義務化
- 雇用主に対し、第三者による従業員へのハラスメントを容認しない義務を導入
- チップに関する規則の改正(すべてのチップが従業員に直接渡り、公平に分配されることを保証)
- 雇用審判所への申立期限を3か月から6か月に延長
2027年以降
改革の最終段階は2027年に施行される予定です。主な内容は以下の通りです。
- 不当解雇からの保護について「雇用初日から」の権利を付与(現行の2年の勤続要件を撤廃)
- 労働者に不利益を与えるゼロ時間契約の利用制限
- 妊娠中および産休から復帰した女性に対する解雇からの保護の強化
- セクハラ防止に向け、雇用主が「合理的な措置」を講じたかどうかを判断するための基準を、規則で明確化できる権限の付与
- 柔軟な働き方(Flexible working)の権利拡充
- 妊娠24週以前の流産も対象とする、法定の忌引休暇の導入
3CSにできること
このように、多くの制度変更が予定されているため、雇用主は常に最新情報を把握し、早めに対応することが重要です。3CSは、貴社が今後導入される変更点を理解し、事前に準備できるようご支援いたします。
既存の就業規則・社内手続・雇用契約の監査から、マネージャーや人事チーム向けの研修まで幅広く対応可能です。不当解雇手続や休暇・病気休暇制度の変更など、多岐にわたる改革に備える体制を整えるサポートが可能です。ぜひお早めにご相談ください。