金融行為規制機構 (FCA)は、金融機関が顧客により高い基準の保護を提供することを目的とする新しい規則、「消費者義務」を導入しました。この規則は、新規の商品・サービスまたは販売・更新が可能な既存の商品・サービスに対しては、2023年7月31日に適用が開始されました。既に終了した商品またはサービス(つまり、リテール顧客に対する販売・流通が終了し、更新もできない商品・サービス)に関しては、2024年7月31日から適用されます。
消費者義務は、英国において認可を受けた金融機関が「リテール顧客」(すなわち個人顧客や中小企業)に提供する商品やサービスについて課されます。また消費者義務は、「顧客と直接の関係がある金融機関だけでなく、顧客への成果に影響を及ぼす能力や重要な影響を持つすべての金融機関」に課されます。FCAによる詳細な情報はこちらからご確認いただけます。
なぜ消費者義務が必要とされているのか?
消費者義務に関する規則は、金融サービスを提供する企業が顧客を公平に扱い、顧客の利益を最優先に行動することを確実にすることを目指しています。市場調査や消費者および業界関係者へのヒアリングを重ねた結果、FCAは、特に保険、住宅ローン、年金、投資などの複雑で競争の激しい市場において、消費者に実際に与えられている保護と、与えられるべき成果の間に大きなギャップがあることを見出しました。消費者義務はそのギャップに対処すべく、金融機関がどのようにコミュニケーションを行い、商品やサービスを設計・提供し、苦情処理や救済にどのように対応すべきかを明確にしています。
消費者義務はまた、消費者が十分な情報を得た上で選択を行えるようにすること、また金融機関に自らの行動に対するアカウンタビリティを持たせることを意図しています。
消費者義務の主な要素は?
消費者義務の主な要素は次の3つです:
- 消費者原則:金融機関は顧客の利益を最優先に行動し、顧客に損害を与えないよう努めなければなりません。
- 横断的ルール:金融機関は、予見可能な顧客への損失を回避するためにあらゆる合理的な手段を講じ、顧客が財務目標を追求できるよう支援し、誠実に行動する必要があります。
- 4つの成果:コミュニケーション、商品とサービス、顧客サービス、価格と価値に関して、顧客が金融機関から享受すべき行動とサービスの基準が規定されています。
FCAが金融機関に期待することは?
FCAは、金融機関が、その企業文化、ポリシー、プロセス、ガバナンス、監督体制において、消費者義務を浸透させることを期待しています。また、金融機関は自身が消費者義務を遵守しているかをモニタリングし、テストし、問題点を改善しなければなりません。場合によっては、金融機関はその成果がFCAの期待に沿ったものとなっているかを示す必要があるかもしれません。
規則を遵守しない場合の制裁は?
FCAは、罰金、事業活動の一時停止や制限、または認可の取り消しといった監督および制裁措置を講じて消費者義務を強制する権限を有します。FCAはまた、消費者義務の違反によって損失を被った場合の私的な訴追請求権 (private right of action)の導入を検討することも示唆しています。
消費者義務の導入は金融機関にとって何を意味するか?
英国でリテール顧客向けに商品やサービスを提供する金融機関は、消費者義務を遵守し、確実にFCAおよび顧客の期待に沿う必要があります。金融機関が取るべき典型的なステップは以下の通りです。
- 現行の実務を見直し、消費者義務に関連するギャップやリスクを特定します。
- 問題を解決し、顧客に対する成果を改善するための計画を策定し実行します。
- 消費者義務と、各社員の役割および責任への影響について社員研修を行います。
- 消費者義務の遵守状況や、顧客が金融機関に期待していることについて、顧客とコミュニケーションを行います。
- 契約、契約条項、苦情対応の手順を見直し、消費者義務に準拠していることを確認します。
- FCAの消費者義務に関するガイダンスやフィードバックの最新情報を確認し、必要な調整を行います。
3CSにできること
消費者義務は、金融機関と消費者にとって大きな規制上の変化です。消費者保護は顧客の保護と金融業界への信頼向上を目的としています。消費者義務に関する詳細な情報や、その他会社法、商法に関するサポートが必要な場合は、担当者へお問合せください。