カンパニーズハウスは現在、海外事業体登録(ROE)に未登録の海外事業体に対し、罰則の警告書を送付しています。ROEは、海外事業体による英国不動産の所有の透明性を向上させるため、the Economic Crime (Transparency and Enforcement) Act 2022(2022年経済犯罪(透明性と執行)法、以下「本法」)により創設されたもので、(カンパニーハウスによる警告書の送付は)登録の重要性を明確に喚起するものです。
罰則の警告書には、何が書かれているのか
警告書の上部には「Overseas Entity - failure to register penalty warning notice(海外事業体 - 登録義務違反による罰則の警告通知)」と書かれた大きな赤いテキストボックスがあり、これが警告的な性質のものであることは一見して明らかです。
このレターには、当該海外事業体が「...英国内に土地を所有していることが確認され、2023年1月31日までにカンパニーズハウスにその旨登録する必要がありましたが、登録がなされず、通知日現在も、まだ登録がなされていません。このことは、当該海外事業体およびその役員が、本法(イングランド及びウェールズで登記された土地については別表3の第5項、スコットランドで登記された土地については別表4の第10項)に基づく犯罪を犯した可能性があることを意味します。」と記載されています。
違反した場合、どのような結果になるのか
また警告書には、「法律違反が確認された場合、カンパニーズハウスは金銭的な罰則を科すことができます。これは、貴社及び当該不動産に深刻な結果をもたらす可能性があります。」と記載されています。
警告書には、ROEに関してカンパニーズハウスがどのように執行権を行使するかを説明するフレームワーク(ガイダンス)へのURLも含まれています。このガイダンスには以下のように記載されています。
『カンパニーズハウスは、一貫性のある、かつバランスの取れた方法で執行を行います。
必要に応じ、執行内容には以下が含まれます:
• 財産の制限
• 民事上の罰金
• 刑事上の起訴』
金銭的な罰則について、フレームワークではどのように述べられているのか
このフレームワークによれば、カンパニーズハウスは、犯罪が行われたことが合理的な疑いを超えて確実なものと認識される場合、民事上の罰金を科すことができるとしています。犯罪の内容に応じ、罰金には以下のようなものがあります。
• 固定金額の罰則
• 日毎の罰則
• 両方の組み合わせ
警告書とは
カンパニーズハウスは、犯罪が行われたと疑われる場合、警告書を発行することができます。警告書には以下の概要が記載されます。
• 違反が行われたと疑う根拠
• 警告書に記載された期間(少なくとも28日間)内にカンパニーズハウスに電子メールまたはレターで問い合わせることができること
• 警告書に記載された期間内に(当該海外事業者が)カンパニーズハウスに連絡しない場合、または(当該海外事業者によって)提供された説明をカンパニーズハウスが受け入れない場合、カンパニーズハウスが罰則を科す可能性があること
海外事業体は警告書に異議を申し立てることができるのか
警告書は、海外事業体に対して28日間の登録期間を与え、違反行為がなかったと考える理由や、その他考慮してほしい点があればそれを説明するよう求めています。警告に従わない場合には、罰金を科される可能性があります。さらに海外事業体が通知の期間内にカンパニーズハウスに連絡しない場合、またはカンパニーズハウスが(海外事業体によって)提供された説明を受け入れない場合、カンパニーズハウスはペナルティを科す可能性があると厳しく警告しています。
罰金額はいくらか
罰金額はPenalty Noticeに記載されますが、フレームワークによれば「カンパニーズハウスは各ケース毎に、その悪質性と損害を評価」して罰金額を定めるとしています。つまり、カンパニーズハウスは罰金額を決定する際には、関係する海外事業体や個人による説明を含むいくつかの要素を考慮するとしており、罰金額は、多額かつ不動産の価値に連動したものとなる可能性があります。
この動きは想定されていたものか
2023年6月、カンパニーズハウスはブログで「Register of Overseas Entities: Where we are now(海外事業体の登録:現在の状況)」を発表し、罰金を科す意向を明確に示していました。以下はそのブログ記事からの抜粋です:
『金銭的な罰則
海外事業体登録簿に登録されていない海外事業体に対して、近日中に罰金を科す予定です。我々は、罰金やその他の執行措置に対するカンパニーズハウスの取り組みを説明するガイダンスを公表しました。
カンパニーズハウスに登録していない海外事業体は、すでに不動産の売却、譲渡、リース、担保設定に際して制約を受けています。海外事業体はまた、海外事業体IDがなければ、英国の不動産を新たに購入することもできません。
我々は、ROEのための重要な次なる段階へ進みたいと思っており、近々ブログでアップデートを公表します。』
今すべきことは?
ROEは、英国において不動産を所有する、または7年超の(住宅用または商業用)不動産の賃借権を有する、英国外の国または地域の法律によって設立されたすべての海外企業(または同様の法人)に対し、その「受益者」または「役員」を申告することを義務付けています。ROEの登録要件を規定する本法は、海外事業体に毎年情報更新報告を提出する義務も課しています。
この件に関する以前のニュースレターで述べたように、我々はすべての海外事業体に対し、登録が必要かどうかを確認し、必要な場合は早急に登録するよう促しています。すでに登録済みの海外事業体については、適時に情報更新報告書を提出する義務があることを再認識していただく必要があります。
3CSにできること
当事務所の企業・商業弁護士およびコンサルタントのチームは、国内および国際的な専門知識を有し、ROEを含む企業・商業・不動産関連のあらゆるリーガル・サービスを提供しております。3CSは、英国にて登録した認証エージェントであり、ロンドンを拠点とするチームは、海外企業や国際的なグループ構造への対応において豊富な経験を有しており、法令遵守のために必要な登録手続や認証手続をサポートすることができます。3CSはまた、実行中の不動産取引に対する本法の潜在的な影響についても評価報告することができます。
ROE上の要件、登録、更新申請に関するご質問、またはカンパニーズハウスとの取引に関するサポートが必要な場合は、3CSの担当者までお問合せください。