法律上の義務を理解し、遵守することは、適正な事業運営に欠かせません。英国には、労働安全衛生法(Health & Safety at Work Act)、一般データ保護規則(GDPR)、贈収賄法(Bribery Act)、経済犯罪および企業透明性法(Economic Crime and Corporate Transparency Act (ECCTA))、雇用権利法(Employment Rights Act)、平等法(Equality Act)など、企業活動を規制する数多くの複雑な法律や規制があります。これらの義務を遵守しない場合、財務面だけでなく企業の評判にも深刻な影響を及ぼしかねません。
人材採用、商業リスク管理、新規市場への参入など、あらゆる場面でコンプライアンスは重要な役割を担います。
本ニュースレターでは、移民法、雇用法、会社法における代表的なコンプライアンス上のリスクを取り上げ、定期的な監査や研修、指針の策定、文書レビューを通じて、これらのリスクを確実かつ効果的に管理する方法をご紹介します。
移民法関連のコンプライアンスで押さえておくべきポイント
英国の雇用主は、従業員を採用する前に就労権利(right-to-work)チェックを行うことが義務付けられています。これに違反すると、従業員1人あたり最大6万ポンドの罰金を科される可能性があります。加えて、評判の失墜や、就労権利のない人物を故意に雇用した場合には刑事罰が科されることもあります。就労権利チェックは、採用プロセスに組み込むことで容易に行えます。人事担当者が適正に就労権利チェックを実施できるよう、研修を行うことが不可欠です。
また、スポンサーライセンスを保有する企業が就労権利チェックを怠った場合、ライセンスが取り消される恐れがあります。ライセンス保持者は、厳密な報告義務や記録保持義務も遵守しなければなりません。これらの義務を継続的に果たすためには、定期的な社内監査や明確な指針の整備が有効です。3CSでは、貴社の業務プロセスのレビュー、ニーズに応じた研修の実施、内務省(Home Office)による査察への対応準備をサポートしています。
雇用法が日常業務に与える影響
英国の雇用法は、賃金、労働時間、職場の安全、平等な待遇など、いくつかの主要な分野を含んでいます。これらの要請に関する雇用主の義務について、常に最新の情報を把握し、正しく理解することで、公平で一貫性のある職場環境を築くことができます。
適切な手続を踏まずに従業員を解雇したり、苦情申立てを無視したり、あるいは、職場でのハラスメントや性的ハラスメントを防ぐための合理的な措置を講じなかった場合、雇用主は深刻な法的リスクに直面する可能性があります。こうした行為が雇用審判所(employment tribunal)での手続に発展すると、多額の損害賠償や弁護士費用が発生するだけでなく、企業の評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。
2024年雇用権利法案(Employment Rights Bill 2024)により、今後2年間で英国の雇用法には大きな変更が予定されており、雇用主が義務を遵守する重要性はかつてないほど高まっています。管理職が苦情対応、公正な懲戒手続、そして敬意あるコミュニケーションを意識して行うことで、法的リスクを回避し、健全な職場環境を育むことができます。
3CSは、貴社の人事プロセスの遵守の確保、および、今後の法改正への準備をサポートします。雇用法に関する問題を防ぐには、明確な社内方針を策定し、一貫して運用するとともに、管理職だけでなく全従業員を対象に、定期的に研修を実施することが重要です。
コーポレート・コンプライアンスの重要性
会社法・商法分野におけるコンプライアンスには、データ保護、反贈収賄ポリシー、詐欺防止、取締役の義務などが含まれます。これらは単なる形式的な要件ではなく、企業の安定性やステークホルダーからの信頼に直結します。英国 一般データ保護規則(UK GDPR)では、データ侵害が発生した場合、最大1,750万ポンド、または企業の世界売上高の4%のいずれか高い方の罰金が科される可能性があります。また、2010年贈収賄法(Bribery Act 2010)においては、贈収賄防止を怠った企業に無制限の罰金が科される可能性があり、取締役は最長15年間の資格剥奪処分を受けることもあります。さらに、大企業(およびその子会社)が合理的な不正防止措置を講じていなかった場合、無制限の罰金、評判の損失、さらには刑事責任を問われる可能性があります。こうしたリスクを適切に管理するためには、健全なコミュニケーション、方針の策定、リスク評価の実施、定期的な方針の見直し、そして従業員研修が不可欠です。
ビジネス全体でコンプライアンスを強化するには
効果的なコンプライアンスには、具体的な取り組みが欠かせません。監査によりリスクを早期に把握し、手続が適切に機能しているかを確認し、改善が必要な点を特定できます。従業員研修を通じて、法的義務が企業全体で理解され、確実に適用されるようにします。また、契約書や方針、手順を定期的に見直すことで、文書の正確性や法的妥当性を維持できます。これらの取り組みによって、企業の透明性を高め、業務上のリスクを低減できます。
3CSにできること
3CSは、以下のように貴社の体制を強化し、組織全体のコンプライアンス向上に役立つ法的知見をご提供します。
- 貴社の事業上のリスクの特定と、罰金や財務損失、評判低下のリスクを緩和するために執るべき措置に関するご助言
- 国内外の企業と協力し、実務に即した信頼性の高いコンプライアンス体制の構築
- 雇用法、移民法、会社法の各分野で、必要に応じた研修、法務監査、詳細な文書レビューのご提供
貴社の事業展開が国内外のいずれであっても、当事務所はコンプライアンス維持と業務の円滑化を支援いたします。詳細はお気軽にお問合せください。