前回の総選挙では、住宅政策が有権者の重要な関心事となりました。

2024年9月11日、借主の権利法案(Renters’ Rights Bill)が提出されました。法案はまだ初期段階にあり、立法手続が進むにつれ、 具体的な内容が変更される可能性がありますが、現時点での法案による主な変更点の概要は以下の通りです。

短期定期借家契約(Assured Shorthold Tenancies)の廃止

現在、住宅賃貸業界の賃貸契約のほとんどは、短期定期借家契約(6ヶ月以上)またはより長期にわたる定期借家契約の形式が 採られています。借主の権利法案では、定期借家契約が排除され、有効な解約がない限り、無期限に継続する無期限借家契約に 置き換えられます。従って、住宅賃貸業界において、柔軟な手続による賃貸物件の所有権回復を可能にし、長らく家主に流動性を提供してきた短期定期借家契約を設定することができなくなります。この変更は、借主により高い安全性と柔軟性を提供することを目的としています。

短期定期借家契約における第21条立ち退き(Section 21 Evictions)の廃止

1998年住宅法第21条(Housing Act 1988)により、家主は、短期定期借契約の場合は、最初の6ヶ月の契約期間満了後、借主を退去させることができます。仮にこの時点で借主を退去させない場合も、家主は、2ヶ月以上前に書面で通知することにより、借主を退去させることができます。

これは「過失なき」退去手続として知られており、家主は理由提示することなく、借主を立ち退かせることができます。借主の 権利法案では、「過失なき」退去手続を禁止し、代わりに家主が立ち退きの理由を証明することを義務付けることにより、これを改めることを目的としています。

新しい取り決めでは、家主は入居後12ヶ月以内に借主を立ち退かせたり、該当の物件に引っ越したり、売却したりすることは できません。したがって、家主の状況が変化した場合、家主にとって制約となります。一方、借主は、借家契約期間中いつでも、2ヶ月前に家主に通知するだけで、借家契約を終了することが可能です。

定期借家契約の占有回復事由

借主の権利法案の下では、家主は、一定の義務的又は裁量的な法定の根拠が存在する場合のみ、第8条通知書を送達して、賃貸 物件の占有の回復を求めることができます。

具体的な根拠と通知期間は法案の第4条に詳述されています。強制的な理由として、例えば、家主が賃貸物件の売却を希望する 場合、または家主自身や家族が再び入居することを希望する場合は占有の回復を求めることが認められますが、4ヶ月以上前の 書面通知が必要であり、また、賃貸期間の最初の1年間が満了する前にはこの通知を行うことはできません。

賃料の滞納が発生した場合、この法案では、借主が3ヶ月以上(現在は2ヶ月)の滞納をした場合にのみ、解約の手続を開始する ことを認め、また、この場合も、4ヶ月以上前に事前通知を行うことが必要となります。

つまり、第8条通知書が強制執行可能となるまでに7ヶ月間以上、借主が賃料を支払わずに物件に居住し続ける可能性があるの です。

現行の規則では、年間賃料が£50,000を超えない場合、借主から賃貸契約開始時に預かれる敷金の上限が賃料の5週間分であることを考慮すると、この要件は家主にとって不利な内容と言えます。

賃料の値上げ

家主には、維持費、修繕費、税金、保険料など、一定の経費がかかります。また、インフレなどの影響もあり、市場価格に応じて賃料を値上げする必要があります。しかし、借主の権利法案では、値上げの方法に制限があります。

賃料の値上げは、年に1度だけ、市場価格に合わせて、第13条通知書を提出することで、行うことができます。借主は2ヶ月前に 値上げの通知を受ける権利があり、正式な審判手続を通じて値上げに異議を唱える権利があります。この異議申立手続が終了 するまで、新しい賃料を請求することはできません。

家主オンブズマン

新法案では、すべての家主が加入しなければならない「家主オンブズマン・サービス(Landlord Ombudsman Service)」も導入されます。オンブズマン・サービスは、紛争が発生した場合の代替的な紛争解決手段として機能するように設計されています。この オンブズマン・サービスは、家主の新たな加入料によって賄われることになりますが、その金額はまだ確定していません。

ディセント・ホーム基準

この法案は「ディセント・ホーム基準(decent home standard)」を提案しています。これは、借主の安全性と快適性の観点から、賃貸住宅の最低要件を定めるもので、家主が賃貸物件のカビや湿気の状態に迅速に対処することを保証する「アワブ法(Awaab’s Law)」 という概念を取り入れたものです。

賃貸差別の防止

潜在的な借主の財務状況を審査する必要性は理解できます。しかし、審査はあくまでも経済状況のみに基いて実施されなければ なりません。借主の権利法案は、『給付金受給者お断り(No DSS)』のような広告を禁止することで、賃貸差別を防止することを目的としています。

賃料の設定

新法案は、家主が物件を広告する際に、一定の賃料を公表することを義務付け、賃料の「入札合戦」を規制しようとしています。これにより、家主は、広告価格以上の賃料支払提案を奨励したり、受理することはできなくなります。

3CSにできること

新法案は初期段階にあり、変更される可能性があります。弊所の経験豊富な不動産法弁護士は、法案の進捗状況を注意深く 見守り、皆様に情報を随時ご提供いたします。
この新法案や不動産法に関するその他の点について、ぜひお気軽にお問合せください。

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