2025年3月18日、Companies HouseはAuthorised Corporate Service Provider(ACSP)の登録受付を開始しました。これは、透明性の向上および経済犯罪の抑制を目的とした英国の会社法改革の重要な段階と位置付けられています。この度、3CSはACSPとして正式に登録され、クライアントの身元確認を実施できるようになりました。
本ニュースレターでは、身元確認が必要となる対象者、手続の流れ、及び、重要な支配権を有する者(PSC)が法人である場合の対応といった、身元確認に関する変更点について解説します。また、本年後半に施行予定の新たな企業犯罪である詐欺防止不履行罪についても解説します。
身元確認を完了しなければならないのは誰ですか?
新ルールの下では、取締役(および同様の役職者)、重要な支配権を持つ人物(PSC)、および会社秘書や代理人などCompanies Houseに書類を提出する個人は、身元確認を受けることが義務付けられます。つまり、英国企業の設立、所有、経営、または英国企業を代理しての書類提出業務に関与するすべての者が、身元確認手続を完了する必要があります。
PSCが法人である場合はどうなりますか?
PSCが法人である場合でも、代表者を通じて身元確認要件を満たす必要があります。具体的には、当該法人の取締役または経営責任者から、法人を代表して本人確認を受ける1名を選ぶ必要があります。法人は、短期間(28日以内と想定)で確認を完了し、すべてのPSCを身元確認済みの個人に紐づけられるようにしなければなりません。
タイムラインおよび必要な対応
身元確認に関する新ルールは2025年から2026年にかけて段階的に導入されます。ACSPの登録は2025年3月に開始し、4月から任意の身元確認が開始します。
秋までに、新任の取締役・PSCに対する身元確認が義務化され、既存の企業には12か月の移行期間が設けられます。2026年春からは、書類提出を行う代理人も身元確認義務の対象となります。
違反に対する制裁は2026年末までに施行が予定されており、早めの対応により遅延や罰則を回避することが可能です。
身元確認の方法
身元確認の方法は複数存在し、GOV.UK One Loginを使用し、写真付き身分証明書をアップロードするか、セキュリティに関する質問に回答することで確認を行うことができます。また、一部の郵便局で、対面での身元確認を受けることも可能です。
また、ACSPが身元確認を行い、Companies Houseに対して認証することも可能です。身元確認完了後、書類提出時に使用するための固有コードが発行されます。通常、身元確認は一度限りで完了し、別途再確認を求められない限り、その後は確認を受ける必要はありません。
新たな犯罪:詐欺防止不履行罪
2025年9月1日から、大企業に対して、詐欺防止不履行罪という新たな企業犯罪が適用されます。従業員や関係者が企業の利益のために詐欺を行い、その企業が合理的な詐欺防止手続を講じていなかった場合、起訴される可能性があります。
重要なことは、経営陣が詐欺に関与していなくとも、会社が責任を問われるという点です。
誰が影響を受けるか
この犯罪は、以下のいずれか2つ以上の基準を満たす大企業のみに適用されます。
・売上高3,600万ポンド以上
・資産1,800万ポンド以上
・従業員数250人以上
これらの基準は子会社を含めた組織全体について判断され、本部や子会社がどの国に所在しているかは問題となりません。また、この犯罪は、詐欺が英国で行われた場合、または利益や損失が英国で発生した場合に、組織の所在地に関わらず適用されることに留意する必要があります。中小企業は適用対象外ですが、詐欺に関与した個人は、引き続き、既存の法律に基づき起訴される可能性があります。
3CSにできること
これらの変更は、英国の企業規則に重要な影響を与えます。身元確認手続は透明性を向上させ、大企業は詐欺防止措置を講じる必要があります。
企業におかれては身元確認の準備を始めていただき、大企業に該当する場合は、9月までに、自社の詐欺防止策を見直されることをお勧めいたします。
サポートが必要な場合は、3CSの経験豊富な商法専門弁護士までお気軽にお問合せください。