はじめに
多くの議論を経て、2024年デジタル市場、競争及び消費者法 (DMCCA) が法制化されました。DMCCAは、英国の消費者に対する保護を強化するとともに、消費者の権利と「戦略的能力」を持つテクノロジー企業に関する英国の競争規制当局の権限を強化するものです。特に、DMCCAにより、消費者はオンライン購入に際してより多くのコントロールと透明性を得ることができます。
本ニュースレターでは、DMCCAの対象となる主要な消費者法の変更点をご紹介します。
なぜオンライン市場における消費者保護を強化する必要があるのか?
国家統計局のデータによれば、オンライン販売は英国の全販売の相当の部分を占めています。以下のグラフは、オンライン販売の成長を示しており、その割合は、英国内の全販売の20%を超えています。コロナ禍のロックダウン期間中にオンライン販売の量が急増しましたが、ロックダウン解消後の現在においても、オンライン販売及びそれに関連する紛争の量は依然として非常に多いと言えます。
DMCCAが焦点を当てるオンライン取引の手法とは?
サブスクリプショントラップ これらは、サブスクリプションへの登録を容易にする一方で、解約を難しくする手法です。例としては、契約の自動更新や、有料のサブスクリプションに自動で移行する無料トライアル、解約時の手数料などが挙げられます。こういった手法に対して、DMCCAは以下のように規定しています。
- リマインダー - 無料トライアル、割引提供、又は初回及びそれ以降の更新支払いの終了を通知し、顧客に契約を終了するか、更新するかを選択する権利があることを知らせるリマインダーを顧客に送信しなければならない。
- クーリングオフ期間 - 初回のサブスクリプションだけでなく、契約の各更新にもクーリングオフ期間が適用され、クーリングオフ期間中の解約があった場合は、料金を返金しなければならない。
- 解約権 - 企業は解約に関してガイダンスを提供することができるが、制限的な解約条件を強制することはできない。消費者は、企業が提供する特定の方法に従わなくても、「明確な声明」を送ることで契約を解約する権利がある。
ドリップ価格と隠れた料金 ドリップ価格とは、最初から総額を表示せず、申込手続の途中で追加費用の存在が明かされる場合を指します。
虚偽レビュー DMCCAは虚偽レビューを禁止される商業手法のリストに加えました。虚偽レビューには、虚偽レビューの提出又は依頼のほか、レビューが本物であることを確認するための合理的かつ適切な手段を講じずにレビューを公開することが含まれます。また、依頼又は報酬を受けて書かれ、又は提出された消費者のレビューも含まれます。
これらの消費者保護違反に対してどのような制裁が課されるのか?
DMCCAは消費者法違反に対する一連の罰金を規定しています。これらは企業にとって新たな重大なリスクであり、消費者法違反に対する罰金は競争法違反の罰金と同じくらい高額になる場合があります。
消費者法違反に対して、企業及びその関連者は世界年間売上高の最大10%又は300,000ポンドのいずれか高い方の罰金を科される可能性があります。また、規制当局による情報提供要求や指示に従わない場合の罰金もあります。
他のDMCCAの規定内容は?
DMCCAは他の問題についても規定しており、以下はその一例です。
- 規制当局の罰金を課し、指示を出す権限を強化し、かつては裁判所に与えられていた権限の一部を移管。
- 規制当局に特定のテクノロジー企業を戦略的市場地位 (SMS) を持つ企業と指定する権限を付与。対象となる企業は戦略的重要性を持ち、世界年間売上高が250億ポンド以上又は英国年間売上高が10億ポンドを超えるもの。指定を受けた企業は、そのデジタル活動について規制当局の調査を受ける可能性がある。
DMCCAの規定は現在有効か?
DMCCAは2024年5月23日に成立しました。しかし、その規定はまだ発効しておらず、今年後半に発効する予定です。
企業がとれる対策は?
SMSルールが影響する可能性があるのはごく少数の企業に限られます。しかし、消費者とのオンライン契約に関するルールは、多くの企業に何らかの影響を与える可能性があります。新しい消費者保護ルールに照らして、契約条件だけでなく、顧客への更新時のオプトアウト権の通知などのビジネス手法も見直す必要があります。
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