今回のニュースレターでは、雇用主がワクチン未接種者の疾病手当を減額したり、強制的に ワクチンを接種させることができるのかについて見ていきます。4月から法律でNHSと介護施設 職員にのみコロナウィルスのワクチン接種が義務化となりますが、多くの雇用主は、コロナ ウィルスのワクチン接種を義務化するのではなく、従業員にワクチン接種を奨励する方法を模索しています。
しかし、他の産業界でも、最近のコロナウィルス患者の急増とその結果としての自己隔離期間によるサービスや生産の中断といった、継続的な人手不足を懸念しています。雇用主はこれに 対して厳しい態度をとる事ができるのでしょうか?ここでは、起こりうる法の落とし穴を回避 しながら、企業側で出来るかもしれない幾つかの方法を見ていきます。
1. ワクチン未接種のスタッフの問題点は何ですか?
現状では、コロナウィルス陽性者と密接に接触している完全なワクチン接種者は、自分もコロナ陽性でない限り、自己隔離する必要はありません。一方、ワクチン未接種の人は、陽性であるかどうかにかかわらず、自己隔離する必要があります。よって、ワクチン未接種のスタッフは仕事を休む事になります。
2. イケア、ネクスト(衣料品量販店)、その他いくつかの大企業は、コロナウィルスに感染した人と密接に接触した後、自己隔離するように言われたワクチン未接種の 従業員の疾病手当を減額しています。私たちも同じことができるでしょうか?
これは従業員が会社の疾病手当を受け取る契約上の権利を持っているか どうかに大きく左右されます。雇用契約書と疾病に関する方針の文言を 確認し、どの条項が契約上のもので、どの条項がそうでないかを確認する必要があります。会社の疾病手当に関する契約上の権利がある場合、従業員の同意がある場合にのみ変更すべきです。一方的に変更を強行すると、契約違反の申し立てが発生する恐れがあり、従業員との関係に悪影響を与えます。会社の疾病手当が契約上の権利であることが明示されて いない場合でも、従業員は、そのような条件は慣行を通じて暗黙の権利であると主張する可能性があります。
疾病手当制度の変更は容易ではありません。特に、従業員の給与が大幅に減少するような変更を行う場合は、事前に助言を得る必要があります。
3. ワクチン接種者と非接種者を区別して扱うことによる法的リスクはありますか?
それぞれのケースの事実関係に応じて、さまざまな差別の主張が可能です。コロナウィルスの ワクチン接種を受けないという選択は、医学的理由、宗教的または哲学的な信念、あるいは妊娠に関連する理由で生じる可能性があります。
「反ワクチン」の信念が、法的に保護されるものとして真剣に受け止められるかどうかは疑問が残ります。また妊娠中のワクチン接種の安全性に関する高い信頼性が、従業員からの差別の申し立てが重大な法的リスクになることを回避していると思われます。このうち、医学的な理由で ワクチンを接種しないことが(限定的ではあるが)あるため、障害者差別が、最も関連性の高い差別です。
したがって、ワクチン未接種者に対する疾病手当の減額は、障害者に対する間接的な差別となる可能性があります。この場合、個々のケースにおいて客観的に正当化されなければなりません。また会社は、そのような方針が正当な目的を達成するための相応な手段であることを示すことができなければなりません。
確かに、ワクチン未接種のスタッフに対する疾病手当を法定疾病手当のみに制限する方針は、 病状に合わせ、ケースバイケースで免除を認める必要があります。
4. 会社の疾病手当を支給したくない場合、ビジネスに役立つような方針変更は可能でしょうか?
はい、他にも変更したい方針があるかもしれませんが、会社がそれを行えるかどうかは、その 資格が契約上の権利であるかどうかによります。例えば、コロナウィルス関連の欠勤に対する 会社の疾病手当は、(現在の疾病手当と同様に)1日目からの権利とすべきか、それとも欠勤 4日目以降にのみ支払われるべきかを検討することができます。
また、12ヶ月毎に一度、コロナウィルスに関連する欠勤に対してのみ会社の疾病手当を支給し、それ以降のコロナウィルスに関連する病気欠勤に対しては法定疾病手当のみを支給することも可能です。
また、多くの雇用方針は、従業員が単に出勤できないだけでなく、実際に病気であることを条件としているため、自己隔離している人によっては、症状がなく在宅勤務が可能な場合があります。
5. 従業員のワクチン接種状況を記録してもよいですか?
会社の疾病手当資格とワクチン接種の状況を関連付けるには、必然的に従業員にワクチン接種の状況の確認を要求する必要があります。 ワクチン接種のデータは「特別カテゴリーデータ」であり、より高度な保護を受けているため、GDPR上の問題が発生します。つまり、そのような情報を記録、処理、保持する正当な理由があることを会社が示す必要があります。また、必要な データのみを収集し、必要以上に長く保持しないようにしなければなりません。
つまり、安全衛生に関する法的義務の遵守や、ウイルスの蔓延を防ぐという実質的な公益性 など、法的根拠がある限り、許可される可能性が高いというのが答えです。ワクチン接種データを収集しなくても事業目的を達成できるのであれば、データ収集を正当化できる可能性は低いということを覚えておいてください。
6. 全職員にワクチン接種を義務付けるのはどうでしょうか?
4月以降、患者と接するすべての医療・福祉従事者は、働くために完全なワクチン接種を受け なければならなくなります。ワクチン接種を拒否したNHS職員は、最終的に失職する前の段階で、コロナウィルスのワクチン接種を必要としない非患者対応業務への配置転換の機会が提供されることになります。
ワクチン接種が法的に義務付けられていない他の業界では、特殊な事情から正当化されるかも しれませんが、同様の「接種なし、仕事なし」アプローチを展開することは非常に危険です。 例えば、NHSの施設でのサービスを提供する企業は、ワクチン接種者だけを派遣するように要請されるかもしれません。この場合、あらゆる問題が生じる可能性があり、ワクチン未接種の スタッフを他の同等業務に配置転換する手段と可能性を検討する必要があります。
解雇がやむを得ない場合、「何かその他の実質的な理由」があれば、公正な解雇となる可能性があります。すべての不当解雇のケースと同様に、企業は公正な手続きを踏んで、あらゆる状況を考慮しながら合理的に従業員を解雇する必要があります。
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