1954年土地所有者及び賃借人法は、イングランドとウェールズにおける商業用不動産賃貸借を監督する法律です。法制委員会は最近、英国における商業用不動産の需要は進化しており、この法律が時代遅れになっていると主張しています。
2024年11月に開始された協議(施策の公表及び専門家や利害関係者からの意見募集プロセス)では、賃貸権の保障条項の現代化を中心に、同法の改革が提案されています。以下では、主要な提案と商業用不動産の貸主や借主に及びうる影響について詳しく見ていきます。
賃借権の保障モデル
現在、事業者である借主は、一定の条件を満たす場合、契約期間満了時に自動的に賃貸借契約を更新することができます。この仕組みにより、借主は突然の立ち退き請求から保護される一方で、貸主には一定の制約が課されます。
法制委員会の提案には、より柔軟な賃貸モデルの導入が盛り込まれており、当事者のニーズに合った契約条件を自由に交渉できるようにすることを目的としています。
法律の適用範囲
この法律の適用範囲の変更の是否について議論が続いています。現行法は、6ヶ月以下の短期リースなど一部例外も存在するものの、ほとんどの商業用賃貸借に適用されます。現行法では、業種ごとに固有の要求に対応できていないとの指摘があります。例えば、小規模な小売店舗と大規模なオフィスの利用者は、そのニーズが大きく異なります。
本法の適用範囲を賃借権の種類に応じてより限定的にすることが提案されています。これにより、現代の商業的な実情により即した解決策を得られるようになります。現在、協議の中で、4つの異なるモデルが提案されています。
- 強制的な賃借権の保障
検討されている選択肢の一つは、適格な賃貸借契約の全てについて、賃借権の保障を義務化する、というものです。これにより、現在は認められている、当事者間の合意による本法の適用除外が廃止されます。この仕組みにより、新たに入居する借主にとっては安定性が向上しますが、一部では、この変更により、特に需要の高い地域で、貸主が物件を賃貸に出すことが抑制される可能性が指摘されています。また、賃借権の保障の義務化により、家主の管理コストが増加し、その負担がテナントに転嫁される可能性も懸念されています。
- 賃借権の保障の完全廃止
反対に、賃借権の保障を完全に廃止することも議論されています。これを支持する人々は、法律の介入を受けることなく、市場がリースの条件を決定すべきだと主張しています。このモデルを採用する場合、貸主と借主は自分たちの状況に応じた条件を交渉できるようになります。
しかし、このモデルを採用した場合、特に需要が供給を上回る市場で、小規模な借主が搾取されやすくなる可能性があります。賃借権の保障の廃止により、商業不動産市場が不安定となり、賃借人の立場が弱くなる可能性が指摘されています。
- 合意による適用モデル
合意による適用モデルの下では、当事者間で明示的に異なる合意をしない限り、原則的に、賃借権の保障が適用されないことになります。これは、現在の、特別の合意により適用を除外しない限り自動的に賃借権の保障が適用される仕組みとは逆となっています。このモデルの支持者は、長期的な保障よりも柔軟性が重要な現代のビジネス環境により合致していると主張しています。このアプローチにより、賃借権の保障の適用を除外する際の時間とコストが削減され、契約交渉を効率化できる可能性があります。
- 現行の合意による適用除外モデル
現行の合意による適用除外モデル(原則として賃借権の保障が適用されるが、貸主と借主が合意により適用を除外することができる仕組み)は、継続的な議題となっています。このアプローチは契約に柔軟性を持たせていますが、手続を簡素化すべきだとの意見もあります。
改革案には、保障策としての機能を維持しつつ、プロセスを簡素化する案が盛り込まれています。例えば、標準化された電子的合意フォームの導入が議論されています。
今後のステップ
現在提案されている内容に対する意見は様々ですが、現行の枠組みには見直しが必要であることは共通認識となっています。事業者や不動産所有者のニーズは、この法律の導入以来変化しています。現在提案されている改革は、英国の商業用賃貸契約法を現代化するための絶好の機会となります。
協議は2025年2月に終了し、今後、法制委員会は、利害関係者から寄せられた意見を検討し、第二次協議文書を公開することを見込んでいます。
3CSにできること
法制委員会の提案に関するご質問があれば、私たちの経験豊富な不動産法弁護士チームがサポートいたします。
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