M&Aは長年に亘って、事業拡大や現地の専門知識の獲得を目指す海外企業にとって、英国やヨーロッパへの進出手段となってきました。このニュースレターでは、現在のM&A市場の状況と買収に着手する前に考慮すべきいくつかの重要な問題について取り上げます。

英国市場はどのくらい好況か?

Mergermarketによると、2023年第一四半期の取引件数は前四半期比で13%増加しており、パンデミック前の水準を上回っているとされています。しかし、取引額は前四半期を下回っており、より小規模な取引が好まれていることを示しています。  

極東からの投資の状況は?

2022年の極東から英国へのM&A投資は2021年実績を下回りましたが、未だ高い水準にあります。Dealogicによると、2022年の極東発の対英国投資は総額1,122億ドルであり、2021年実績の1,719億ドルを下回ったものの、依然として2020年実績の2倍以上の水準に上っています。

停滞こそ見られますが、極東の投資家は依然として英国市場に興味を持っていると言えます。英国は、強力な経済と熟練した労働力を有する安定した魅力的な投資先とみなされています。また、極東の投資家にとっては世界で最も革新的なセクターのひとつである英国のテクノロジー産業も魅力のひとつです。

英国でM&A投資を行う前に検討するべき重要な問題は?

英国へのM&A投資に際し、海外企業が考慮すべき重要な事項は数多くあります。例えば、

  • 規制環境: 英国には複雑な規制環境があるため、海外投資家は投資を行う前に関連する法令や規制を確実に把握する必要があります。 
  • 文化の違い: 英国は他の多くの国と異なる文化を有しており、海外投資家は投資を行う前にその文化的な慣習や価値観を理解しておく必要があります。
  • 為替リスク: 海外投資家は為替レートの変動が投資価値にどのような影響を与えるか考慮する必要があります。
  • 経済見通し: 海外投資家は投資を行う前に英国の経済見通しを理解しておく必要があります。

今後12ヶ月の間に、英国におけるM&A投資にはどのような傾向が予想されるか?

一般的にはテクノロジー産業への投資が特に見込まれています。これは技術革新の急速な進行やグリーンM&Aの台頭など、多くの要素によるものです。

しかし、英国の経済は多様化しており、投資対象も幅広い分野に及ぶことが見込まれます。変動の激しい経済状況は、プライベートエクイティ企業の継続的な成長と潤沢な資金と相まって、M&A投資の機会を生み出すかもしれません。

留意すべき法的事項は?

既存事業を買収する場合、その事業に関するすべての法的および規制事項に留意しなければなりません。その対象には、雇用や税務に関する一般的な法律の他、輸出規制や知的財産法など対象企業に特有の規制や法律も含まれます。先述の通り、一般的に環境問題、特にESGに関する問題は、(M&Aの)対象となるビジネスへの投資機会を伺う投資家にとって今後より重要な要素となってくるでしょう。

以前お知らせした通り、特定の産業への投資に対しては政府承認が必要となる場合があります。詳細は過去のニュースレターをご参照ください。 

また、デューディリジェンスは、対象企業およびその事業分野に関連するリスクを理解する上で重要なものです。実施する際には、法律、財務、会計、税務、商業的な問題をカバーする必要があります。

M&A投資において重要だが、忘れられがちな要素は?

上述の通りデューディリジェンスは重要なものであり、できる限り詳細に実施するべきです。しかしながら、合併後の統合プロセス (post-merger integration, PMI)が投資を成功させるより重要な鍵となりえます。特に海外からの投資の場合、労働慣行に文化的な違いが存在しますが、その違いを理解した上で、投資後の新企業グループに慎重に統合させていく必要があります。また、海外企業が買収を行った場合、1人または複数人のマネージャーを本社から買収先に派遣することも多くありますが、入国管理法の遵守といった、単純であるものの手間のかかる事項にも対処する必要があるでしょう。雇用条件の調和も慎重に対処すべきセンシティブで複雑な事項と言えます。

M&A投資活動の見通し

全体的に見て、2023年の英国におけるM&A投資活動は安定的に推移すると予想されますが、大規模な取引を後押しするような潜在的な市場の成長要因もあります。テクノロジー産業の継続的な統合やグリーンM&Aの台頭、プライベートエクイティ市場の継続的な成長、戦略的M&Aの増加、ESG分野への関心の高まりは注目すべきトレンドと言えます。

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Keith McAlister

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