英国政府は、グラフェンを製造する英国の小規模企業に対して中国企業が買収を提案している案件について、国家安全保障上の見直しを命じている旨を発表しました。 英国が対内投資の魅力とM&Aにおける軽やかな規制体制を誇っていることを考慮に入れて、英国政府がM&A取引に介入する権利について考察してみます。

英国政府は、どのような根拠に基づいて、民間企業の取引に介入することができるのでしょうか?

最初に強調しておきたいことは、英国政府は民間のM&A取引に定期的に介入してはいないということです。 実際にそれは極めて異例なことであり、一般的には企業合併の許可を得る必要はありません。

しかし、政府は特定の合併案件に介入する権限を持っています。これらの案件は、「公益の考慮」、「特別な公益に関する案件」、「正当な利益」を保護するための介入を伴うものです。 政府は、グラフェン案件への介入は、「英国で供給されるグラフェンプラズマ製品および/またはサービスの少なくとも4分の1が、ペルペトゥス社(対象会社)によって供給されている」という事実に基づいているとコメントしています。

現行制度では、売上高テスト(一般的には7,000万ポンド)および供給シェアテスト(英国における供給または購入の25%以上)があり、グラフェン案件は供給シェアテストに該当します。

政府が介入する案件を持っているかを決めるのは誰ですか

英国の競争規制当局である競争・市場庁(Competition & Markets Authority(CMA))と呼ばれる独立機関が、照会について検討します。 照会内容に応じて、合併を許可するだけでなく、合併を拒否するべき理由についての意見を公表してそれを政府に差し戻すこともできます。 介入が国家安全保障に関連している場合、その決定に至るまでには競争・市場庁(CMA)の結論を考慮しなければなりませんが、合併を阻止する決定について最終的な責任は政府にあります。

制度の変更案がありますか?

はい、英国政府は「2021年国家安全保障・投資法(National Security and Investment Act 2021 (NSI Act)」という法律を可決しました。これにより、国家安全保障を目的とした買収・投資を政府が精査して介入するための、新たな独立した体制が確立されます。この新制度は、上述した政府の現行の介入権のうち、国家安全保障面を代替するものになります。

国家安全保障・投資法(NSI Act)の要点は何ですか?

国家安全保障・投資(NSI)制度は、特定の適格事業体や適格資産に対する支配権の取得を伴う、特定のカテゴリーの取引や投資に適用されます。対象取引(国家安全保障・投資法(NSI Act)では「トリガーイベント」と呼ばれるもの)は以下の通りです。

  • 25%、50%、75%のいずれかのしきい値を超える、適格事業体の議決権または株式を取得する取引
  • 適格事業体の業務を支配するあらゆる種類の決議の可決または阻止することが可能となる議決権の取得する取引
  • 適格事業体の政策に対して重要な影響力を取得する取引
  • 次のことを可能にする、適格資産に対する、または適格資産に関する権利または利益を取得する取引:(i)資産の使用または取得前よりも広範な資産の使用、あるいは(ii)資産の使用方法の指示または管理、もしくは取得前よりも広範な資産の使用方法の指示または管理

国家安全保障・投資(NSI)制度の主な特徴は以下の通りです。

  • 義務的な通知。特定の機微な経済分野に適用される通知義務制度で、買収完了前に英国政府からの事前の承認および許可が必要となります。このような承認が得られない場合には、買収は無効となり法的効力が生じず、刑事罰や民事罰が科せられることもあります。
  • 自発的な通知。国家安全保障上の懸念が生じる可能性のある取引の当事者からの通知を推奨する、自発的な通知制度(義務的な通知要件の対象とならない取引の場合)。
  • 政府の召喚(call-in)権限。国家安全保障上のリスクを引き起こす可能性があると合理的に疑われる範囲内の取引について(通知されたかどうかに関わらず)、英国政府が審査するために召喚(call-in)する権限。取引完了後にも適用可能。
  • 救済措置と制裁措置。国家安全保障上のリスクに対処するための救済措置(条件の付与、取引の禁止または撤回を含む)、および国家安全保障・投資(NSI)制度遵守の懈怠に対する制裁措置を講じる権限。これには、世界全体の売上高の5%または1,000万ポンド(いずれか高い方)以下の罰金および5年以下の懲役が含まれる。

「機微な分野」とは何ですか?

まだ最終決定ではないものの、以下のような内容になると思われます。

先端素材

政府への極めて重要なサプライヤー

軍民併用技術

先進ロボット工学

危機管理に関する極めて重要なサプライヤー

量子技術

人工知能

暗号認証

衛星・宇宙技術

民生用原子力

データ・インフラストラクチャー

合成生物学(旧称は「生物工学」、協議後に名称変更)

通信

防衛

輸送

コンピュータハードウエア

エネルギー

 

 

 

いつ施行されますか?

現在のところ、国家安全保障・投資法(NSI Act)は2022年1月に全面施行される予定です.

英国における買収を検討されていて、上記の問題に関する詳細なガイダンスをご希望の方は、コーポレートチームのメンバーにお問い合わせください。

Keith McAlister

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