2024年10月に導入された「雇用権利法案(Employment Rights Bill)」は、英国の雇用法を大きく変革するものであり、とりわけ、不公正解雇から保護される権利への影響は大きいと言えます。主な変更点として、不公正解雇から保護される権利の付与までの2年間の就労要件が廃止されること、そして「解雇と再雇用」の慣行に対する規制が厳格化されることが挙げられます。

これらの変更案は、雇用主および労働者の双方に大きな影響を与えると考えられます。以下に、この2つの重要な変更の概要を示します。

2年間の就労要件の廃止

現在、英国の従業員が不公正解雇から保護される権利を付与されるためには、2年間継続して勤勤続する必要があります。この2年の間、雇用主は、不公正解雇の法的申し立てのリスクを負うことなく、新たに採用した従業員を評価することができます。1971年に不公正解雇から保護される権利が導入されて以来、権利を付与されるために必要な勤続期間は6か月から2年の間で変動してきましたが、「雇用初日からの権利」とされたことは、これまで一度もありませんでした。

本法案では、この勤続期間要件が廃止され、従業員は、雇用初日から不公正解雇から保護される権利を付与されるようになります。この変更により、従業員は以前の時間的制約を受けることなく解雇に異議を申し立てることが可能となり、雇用の安定性を向上させることを目的としています。

Initial Period of Employment: IPE

上記の勤続期間要件を廃止する代わりに、本法案はIPEという概念を導入しています。これは、基本的に、法定の試用期間に相当するものです。IPEは、雇用初日から従業員に不公正解雇から保護される権利を付与しつつ、採用判断の修正が必要となった場合に雇用主へ一定の柔軟性を提供することを目的としています。この期間の具体的な長さはまだ確定していませんが、9か月程度になると予想されています。

本法案が提案している内容は、IPE中は、雇用主が、解雇は従業員の勤務態度、職務遂行能力、雇用関係を持続不可能にする対立、または法的制約といった具体的な理由に関連していることを示す必要があるというものです。

ただし、整理解雇に関しては、従業員は、雇用初日から、不公正解雇を受けない権利を付与されます。

このIPE中における不公正解雇に対する補償額は、通常よりも低くなる可能性がありますが、その具体的な額はまだ明確ではありません。

「解雇と再雇用」の終焉?

「解雇と再雇用」とは、雇用主が従業員を解雇し、従業員にとって不利な新しい契約条件のもとで再雇用する慣行を指します。

本法案では、このような慣行を制限するためにより厳格なルールを導入します。新しい法律の下では、契約条件の変更を拒否したことを理由に解雇することは、不公正解雇とみなされます。また、異なる契約条件で別の人を雇用するために、雇用主が従業員を解雇することも、自動的に不公正解雇と見なされます。

ただし、企業が深刻な財務状況に直面し、存続が脅かされている場合には、例外が適用されます。この場合、企業は、従業員を解雇する前に、公正に行動し、他のすべての合理的な代替手段を検討したことを示す必要があります。

雇用主への影響

新しい法律は、来年まで施行されない見通しのため、対応準備の時間的余裕があります。

2年間の就労要件の廃止により、雇用主は、従業員を解雇する際には、雇用初日から、明確かつ公正な理由を示す必要があります。IPE期間の導入により、一定のバランスと柔軟性がもたらされますが、具体的なルールや期間については、まだ確定しておらず、今後の協議を経て決定される予定です。詳細がどのような内容になるにせよ、雇用主は採用、試用、解雇プロセスを見直し、より厳しい新基準を満たしていることを確認する必要があります。

解雇と再雇用に関する規制の厳格化により、雇用主は雇用契約の変更を慎重に扱う必要性も高まります。従業員と率直で誠実な協議を行い、同意を得ることがこれまで以上に重要となります。

これらの新しい法的要件を遵守しない場合、雇用主には深刻な結果が生じる可能性があります。新しいルールが守られない場合、解雇は不公正解雇と見なされ、不公正解雇の請求は、補償金の支払い、和解費用、訴訟手続きといった面で雇用主に多大なコストをもたらす可能性があります。

3CSにできること

雇用権利法案で導入される変更については、事前に対応を準備することが重要です。当事務所の経験豊富な雇用法弁護士が、これらの重要な変化を乗り越えるためのサポートを提供いたします。本法案の内容や貴社の業務慣行に与える影響についてアドバイスをさせていただきます。

この変更についての詳細については、ぜひお気軽にお問合せください。

John Clinch

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