昨年末、英国政府は維持されたEU法 (retained EU law)の大半は英国法に移行されない限り、2023年12月31日に自動的に失効することになることを意味する、「"Brexit bonfire"」を発表しました。2023年5月10日、英国政府はこのアプローチを変更し、EU法が明示的に廃止されない限り、英国において法的拘束力を持ち続けることになると発表しました。今回は、英国政府の最新の政策文書「"Smarter Regulation to Grow the Economy"」で発表された英国法の最初の変更案を取り上げます。

     1. 協業避止義務期間の制限

現在の状況は?

雇用契約書に制限条項(雇用期間終了後の制約条項としても知られている)が含まれていることは一般的で、これは、雇用期間終了時に、元雇用主と競合すること(競合他社で働いたり、競合となるようなビジネスを自ら立ち上げたりすること)や、元雇用主のビジネスや従業員を勧誘することを制限するものです。制限条項に強制力を持たせるためには、元雇用主のビジネス上の正当な利益を保護するために最低限必要な範囲にとどめる必要があります。

一般的に、競業避止義務期間は雇用期間終了から3か月または6か月(多くの場合ガーデンリーブ期間が差し引かれ短縮されます)ですが、非常に上級職の従業員に対しては、12か月間の競業避止義務期間が適切な場合もあります。

変更点は?

政府は競業避止義務期間を最大3か月に制限することを提案しています。既存の雇用契約にも遡及的な影響を及ぼすのかについての情報はありません。この変更の根拠としては、制限条項があまりにも多くの雇用契約にデフォルトとして含まれており、個人がより良い給料の仕事を探すことを阻害し、企業の競争力と革新性を制限するものであるという点が挙げられています。

この変更の影響は?

競業避止義務条項は、対象の従業員の役割によって常に調整されるべきであり、範囲も期間も過剰であってはなりませんが、特に顧客との強い関係や貴重な技術的知識を持つ上級職の従業員が退職する場合、雇用者のビジネスを保護する上で重要な役割を担うことがよくあります。一方で、本変更案により、雇用主は有能な候補者を迅速に採用することが可能になり、契約違反を促した、つまり、候補者に競業避止義務違反をするように促したとして、法的措置が取られる可能性について、それほど懸念する必要はなくなるでしょう。

政府は、国会の時間が許すのであれば、本案を立法化させる意図を示しています。しかしながら、本変更が導入されることを考慮して、雇用主はガーデンリーブ、ノーティス期間、機密保持や雇用期間終了後の制限に関する標準的な雇用契約条項の見直しを始めるべきです。

     2. ホリデーペイの上乗せと記録管理

現在の状況は?

英国1998年労働時間規則 (the Working Time Regulations 1998 (WTR))は、維持されたEU法に基づいており、現在、週48時間の労働時間制限と夜間労働の制限を遵守していることを示すために、労働時間の適切な記録を残すことを企業に求めています。

変更点は?

政府は以下の変更を提案しています。

  • 労働時間の記録の要件を撤廃。
  • ホリデーペイの「上乗せ ("rolled-up")」の許可 ― これは雇用主に対して、有給休暇の付与を義務付けるものではなく、時間給にその分を上乗せすることを許可するものです。EUの判例法では、ホリデーペイは実際に年次休暇を取得した時間に対して支払われるべきものであるとし、ホリデーペイの上乗せは違法とされています。しかしながら、これらの法律を緩和するため(特に非正規労働者や変動的労働時間制の労働者のために)、政府は、雇用主が従業員の給与全体に、有給休暇に値する給与を合法的に含めることができるように立法化する予定。
  • WTRの第13条(4週間の休暇権利) および第13A条(1.6週間の「追加」休暇権利)に基づく、2つの異なる休暇の権利を統合。

この変更の影響は?

記録管理義務の撤廃は、企業の事務的負担を軽くする一方で、過剰な労働時間や労働者の搾取につながる可能性があります。法定最低休暇数に関して、28日が付与されるという点に変更はありませんが、1.6週間の「追加」年次休暇にコミッション、ボーナス、残業代などの要素を含めるべきかどうかという点に関して、今回の変更案は影響を及ぼす可能性があります(現在は、法定休暇の最初の4週間に関してのみ適用されます)。また、年次休暇の繰り越しにも影響が出る可能性があります(現在は疾病休暇や家族休暇等の特別な事情がある場合を除き、1.6週間に限定されています)。

     3. TUPEに関する情報と協議の要件

現在の状況は?

英国2006年事業譲渡(雇用保護)規則 (The Transfer of Undertakings (Protection of Employment) Regulations 2006 (TUPE))は、従事するビジネスが新しい雇用主に譲渡された場合や、サービスが新しいプロバイダーに譲渡された場合に、従業員を保護することを目的としています。現在は、雇用主は、小規模の企業に対する免除が適用されない限り、承認された労働組合の代表者または従業員から選任された代表者に通知し、必要な場合には協議することが求められています。従業員数が10人未満の企業であればこの要件は免除され、従業員と直接協議することができます。

変更点は?

政府は、従業員数が50人未満の企業、または譲渡した際に影響を受ける従業員数が10人未満の場合、従業員と直接協議が出来るようにすることを提案しています。

この変更の影響は?

上記の要件を満たした企業は、選挙の手続きを取る必要がなく、時間と費用を節約することが出来ます。

3CSにできること

政府は現在、労働時間規制、ホリデーペイ、TUPEの際の協議に対する改革案を検討しており、2023年7月7日までに協議を終える予定です。3CSは、これらの広範囲に及ぶ変更に関して貴社のビジネスをサポートし、アドバイスする準備ができています。より詳細な情報が必要な場合は担当者へお問い合わせください。

Jasmine Chadha

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