トランスジェンダーだと認識している人は以前より増えており、「ジェンダーアイデンティティ」は差別法によって保護されている、または保護されるべきだと言われています。一方で、生物学的な性別の方が重要であるという対抗する意見もあり、この「ジェンダークリティカル」の信念が保護されるべきだという声もあります。雇用主はこの論争にどう対応したらよいのでしょうか?

ジェンダーアイデンティティとは何ですか?

トランスジェンダーの権利強化を支持する人たちは、誰もが生まれ持ったジェンダーアイデンティティを持っていると主張しています。つまり、誰もが自身のジェンダーを認識しており、それは(常にではないものの)多くの場合は出生時に割り当てられた、または認識された性別と一致するものであり、一致しない場合は、トランスジェンダーであるという主張です。また、自分が「ノンバイナリー」であると言う人もいて、これは通常、どちらの性にも当てはまらないという意味で理解されており、これもトランスジェンダーの傘下にあると考えられています。これに対して、ジェンダーアイデンティティが何らかの意味で存在することに反対すること、あるいは、存在するとしてもそれが何らかの法的意味を持つことに異議を唱える人もいます。

法律は何を保護していますか?

2010年平等法は、保護特性の一つを理由とする職場における差別(不利な扱い)またはハラスメントを禁止しています。今回関連する保護特性とは、性転換、性別、宗教また信条を指します。

多くの方が信じていることとは異なり、ジェンダーアイデンティティは明示的に保護されている特性ではありません。雇用主は、異なるジェンダーアイデンティティに対応するために「トランスジェンダーインクルーシブ」と考えられるポリシーを自由に導入でき、実際に多くの雇用主が導入しています。例えば、現在、一部の雇用主は、電子メールの署名に各自が好みの代名詞を記載するようスタッフに呼び掛けています。しかし、これは必須ではなく、それを義務付けることは違法になる可能性すらあります(詳細は下記をご確認ください)。

性転換とは何ですか?

2010年平等法において、Gender reassignment(以下、性転換という)とは、個人が「生物学的またはその他の性属性を変更することにより、自身の性別を転換する過程(あるいは過程の一部)を経るつもりである、経ている、あるいは経たこと」と定義されています。これには、医学的な処置は必須ではなく、性別を法的に変更することも必要とされていません。英国2004年ジェンダー認定法により定められた手続きを経ることで可能になります。

法律はどこまで拡大解釈されますか?

性転換に関する法律は、トランスジェンダーのスタッフを十分に保護していないとの批判があります。例えば、クロスドレッサー(異性装)の保護に適用されるのかは不明です。この法律の説明書きには、性転換の一環として生まれ持った性別と異なる装いをした個人にのみ保護が適用され、単に、一時的に異なる性別のように見えるという理由では適用されないと記載されています。しかし、2020年の雇用審判所の決定は、女性用の服を着た後に、同僚からいじめを受けた「ジェンダーフルイド」あるいはノンバイナリーである(男性して生まれた)従業員は、法的な保護の対象であるという、議論の余地のあるものでした。あくまで雇用審判所の決定であり、拘束力があるものではありません。そのため、この点はあいまいです。

トランスジェンダーの人に対する差別が認められる例外はありますか?

はい、まれなケースではありますが、トランスジェンダーではないことが、職業上必要な要件となることがあります。例えば、雇用主は、レイプクライシスセンターのカウンセラーや、聖職者といった役職には、トランスジェンダーでないことが必須条件であると言うことができるかもしれません。

性別はどう関係しますか?

2010年平等法は、ジェンダーあるいはジェンダーアイデンティティではなく、(男性か女性かの二項対立で定義される)性別を保護しています。しかし、化粧室でよく見られるような、男女共用スペースを認めることにより、差別禁止の基本原則に対する例外も認められています。従業員が、自身のジェンダーが性別とは異なると申告した場合、雇用主はどうすべきかというのは難しい問題です。現在の法律では、従業員はどのように扱われるべきか、そしてどちらの化粧室を使うべきか、という点について特に言及されていません。しかしながら、個人が望むジェンダーとは異なる扱いを繰り返し受けること(misgenderingと呼ばれることもある)や、個人が希望する施設の利用が認められないことは、性転換の観点からハラスメントになるかもしれません。それでも、女性スタッフは、解剖学的には男性である従業員が自分たちの施設を利用することに対して異議を唱えるかもしれません。そのため、一部の大企業では、「ジェンダーニュートラル」である化粧室の設置を検討しています。

ジェンダークリティカルな見解を持つ個人がいる場合はどうしますか?

これは、生物学的な性別は不変であり、ジェンダーという概念で置き換えてはいけないという信念のことです。昨年の注目すべき控訴審であるForstaterでは、これは保護された哲学的信念であるとされました。つまり、企業は、イスラム教の信仰を理由に解雇できないのと同様に、この信念を持っているからといって個人を解雇することはできないということを意味します。これは、直接的差別になります。

Forstaterのその他の影響

これは、ジェンダークリティカルの信念を持つ従業員が、トランスジェンダーの同僚に対して、例えば、執拗に故意に、個人が望まないジェンダーとして扱うというようなハラスメントをしても良いということではありません。スタッフが異なる信念を持つということと、職場においてそれらの信念を表明したり表現するということの間には、区別があるのです。しかし、このケースでは、全ての職員に「個人が望む代名詞」を申告するように義務付けることは、一部のスタッフに対して、彼らが持っていないジェンダーアイデンティティという信念を表明することの強制になりかねないため、違法となる可能性があることを示唆しています。

 

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John Clinch

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