暫定救済とは?
暫定救済 (interim relief)は、解雇の理由または主な理由が、以下の法律に規定される「所定の理由(prescribed reasons)」の一つであると従業員が主張する場合、従業員に与えられる一時的な救済措置です。関連する法律は1996年雇用権利法第128条-132条、1992 年労働組合及び労働関係(統合)法第161条-166条です。この所定の理由には以下のものが含まれています。
- 内部通報
- 安全衛生管理者としての活動、または安全衛生管理者としての職務の遂行
- 集団解雇およびTUPE(Transfer of Undertaking (Protection of Employment)の従業員代表者または候補者としての職務または活動の遂行
- 労働組合活動に関連する理由
暫定救済は差別に関する案件には適用されません。
暫定救済の申請が成功した場合、どのような影響があるのか?
雇用審判所は、雇用主に対して、訴訟が決着するまで従業員の雇用を継続するよう命じるか、より多くの場合、(その従業員が雇用主のために仕事をしていない場合でも)その日までの給与を支払い、すべての福利厚生を提供するよう命じることができます。 また、勤続年数も継続されます。
現在、雇用審判所はかなりの訴訟案件を抱えているため、雇用主は元従業員に対し、審問が全て終了するまで最長で2年間の給与を支払わなければならない可能性があります。 つまり、暫定救済の申請が成功すると、特に元従業員の給与が高かった場合、通常、雇用主にとって非常に大きな負担となります。
暫定救済の申請を行うための要件とは?
雇用形態は「労働者(worker)」ではなく「従業員」(employee)である必要があります。通常の不公正解雇の申し立てとは異なり、従業員は、暫定救済 の申請時に2年以上継続して雇用されているの必要はありません。暫定救済の申請は、雇用が終了した日から7日以内に行わなければなりませんが、解雇通知期間内など、それ以前に行うことも可能です。この期限は厳格であり、延長することはできません。また、通常、雇用に関する申し立てが行われる前に完了しなければならないACASの早期あっせん制度も、暫定救済の申請には適用されません。
暫定救済 はどのような場合に認められるのか?
暫定救済の申請は稀であり、暫定救済の命令はさらに稀です。暫定救済 の命令は、申立人の不公正解雇の申し立てのすべての要素が認められる「可能性が高い」こと、および解雇の理由・主要な理由が法律で定められている禁止理由の一つであることに、雇用審判所が納得した場合にのみ認められます。つまり、本審問で勝訴する可能性が「かなり高い」ことが必要です。これは高いハードルであり、立証責任は従業員にあります。
最終審問で敗訴した場合、申立人は給与を返済する必要があるのか?
いいえ、暫定救済の命令により受け取った給与を、申立人は返済する必要がありません。したがって、雇用主にとって、暫定救済申請の弁護を成功させることが非常に重要です。
暫定救済の審問は公開で行われるのか?
はい、審問は公開を制限する命令が下されない限り、公開で行われなければなりません。雇用主に対する風評被害や恥辱のリスクは、公開原則を覆すには十分ではないため、このような命令を得ることは非常に困難です。したがって暫定救済の申請は、特にデリケートな内部通報の申し立てにおいて、風評被害や商業的損害を最小限に抑えようとする雇用主にとって、大きな課題となることがあります。
暫定救済の申請に対して雇用主はどう対応すべきか?
暫定救済が要求され、それが認められることは稀ですが、申請が認められた場合、解雇された従業員にとって非常に強力な手段となります。なぜなら、従業員は既に不公正解雇の主張が受け入れられる「可能性が高い」ことを雇用審判所に納得させており、また給与の全額を受け取ることができるからです。その結果、雇用主はできるだけ早く申し立てを解決するよう、大きなプレッシャーを受けることになります。
したがって、暫定救済の申請に直面した雇用主は、初めから精力的に弁護する必要があります。厳格な回答期限を考慮し、雇用主に対する暫定救済審問の通知期間は2週間に満たないことが多いため、迅速に暫定救済審問の準備に対応しなければなりません。従業員が公正に解雇されたことを説明する裁判書類と、それを裏付ける証人宣誓書(通常、解雇を決定した人物のもの)を早急に用意する必要があります。また、申請そのものが期限内に提出されたかどうかを確認し、申請のすべての要素の根拠を検討するべきです。例えば、裁判管轄の問題や、事実の根本的な争点など、異議を申し立てることができるようなものがあるかもしれません。
暫定救済の審問は、できるだけ早く雇用審判所から公表されます。雇用主には少なくとも7日前には審問の通知をしなければならないとはいえ、緊急性が高いため、申請者と元雇用主の双方に大きなプレッシャーがかかることが現実です。
暫定救済手続を回避する最善の方法とは?
暫定救済の申請は、内部通報に関する訴訟で行われることが大半です。内部通報は通常、苦情処理手続きの一環として行われます。雇用主は従業員から提起された問題に対して合理的かつ合法的に対応するために、早い段階アドバイスを受けることが重要です。
3CSにできること
暫定救済の申請への対応は非常に複雑で時間がかかるため、専門的な弁護を行わないと非常に高額な費用につながる可能性があります。3CSの経験豊富な雇用法チームは、これまで数多くの暫定救済の訴訟案件を扱ってまいりました。当事務所は、このような訴訟案件を含め、雇用法のあらゆる側面から、貴社のビジネスをサポートすることが可能です。詳細については、3CSの担当者にお問い合わせください。