2025年1月24日以前、おそらく2024年秋か冬に開催される次の総選挙で、政権交代が実現する可能性が非常に高いです。これにより、英国では、現在の保守党政権よりも、より労働組合に配慮した政権が誕生するかもしれません。

なぜ労働組合がこれほどまでに話題になるのか?

2022年にはインフレが再燃し、英国の生活水準は記録開始以降最大の落ち込みとなり、家計は圧迫され、物価上昇に追いつくために賃金の上昇を求める声が高まりました。同時に、労働力不足により、労使関係において労働者が優位になりました。公共機関では、教師、医療従事者や 公務員が賃金の上昇を求めました。民間企業では、交通機関の労働者がが賃金と条件を巡る長期にわたる争いを続けています。労働組合はこれらの紛争を主導し争議行為を呼びかけ、その結果、ストライキによる労働損失日数は過去数年間で最多となりました。

労働組合はどこで活動しているのか?

原則的には、ごく少数の法的例外を除いて、全ての労働者が活動することが出来ます。この冬に実施されたストライキが示すように、労働組合は公共機関に集中しており、(公共機関の)組合員は労働者の50%に達しているのに対し、民間部門はわずか13%です。全体として、組合員数はわずかに増加して近年644万人となりましたが、その間に労働人口が大幅に増加したにもかかわらず、1979年の1,320万人のピークから全体的に着実に減少しています。

なぜ選挙が重要になるのか?

現在世論調査で圧倒的にリードしているキア・スターマー氏率いる労働党が次の選挙で勝利をするだろうと、大半の人が予想しているからです。労働党は労働組合の活動と密接に関わっています。労働組合は一世紀以上前に、労働者の利益を主張するために労働党を設立しました。労働組合は労働党に資金を提供しています。

労働党のリーダーは労働組合をどう見ているのか?

密接な関係性にもかかわらず、相反する感情があるようです。年配の方は、1970年代後半、労働党政権下の「不満の冬 ('Winter of discontent')」に、ストライキにより国の機能が事実上停止したことを記憶しています。次の選挙で勝利をするためには、労働党が労働組合に支配されていると思われることは避けなくてはなりません。トニー・ブレア氏 とゴードン・ブラウン氏が率いた前回の労働党政権(1997年~2010年)では、この事実を認識しており、左派の多くの人々から「反組合 ('anti-union')」的な法律を覆すことができなかったと批判されました。1980年代にマーガレット・サッチャー氏率いる保守党政権下で、労働組合に対する厳しい統制と、争議行動を制限する法律が導入されました。それでも2000年、トニー・ブレア氏は団体交渉のための労働組合を法定承認する制度を初めて導入しました(下記参照)。団体交渉とは、雇用主がスタッフを代表する労働組合と給与や条件について交渉することです。

現在の保守党政権はどうなのか?

マーガレット・サッチャー氏による改革から時を経て、13年近く政権を担っている現保守党政権は、ストライキ前の投票要件をさらに厳しくするために法律を強化しました。そして現在、この冬、公共機関で発生した給与をめぐるストライキによる混乱に憤慨した政府は、今後このようなストライキが発生しても最低限のサービスレベルを維持できるようにするための法案を国会に提出しました。

労働党が政権を取った場合、これらの法律を廃止するのでしょうか?

これはキア・スターマー氏がこれから選挙までの間、避けたいと考えている質問です。しかし、労働組合のリーダー達から、直近の「反組合」法の廃止だけではなく、1980年代のマーガレット・サッチャー氏による改革の一部も廃止するように圧力を受けることになるでしょう。組合のリーダー達は、トニー・ブレア氏率いる政権下の中道的な労働関係政策ではなく、労働党を左傾化する方向に舵を切りたいと考えています。彼がこれに従うかどうかは、現在の政治における大きな未回答の問題の一つです。とはいえ、キア・スターマー氏は、反組合法の一部を限定的に廃止することはあっても、トニー・ブレア氏が実施したアプローチを全体的に踏襲すると考えるのが妥当でしょう。

労働組合は一般的に力を増すのか?

法律と政治・労使関係は別物です。1970年代にダウニング街へ頻繁に出入りし、経済政策の形成に貢献したような権力と影響力を労働組合が取り戻すことはないでしょう。とはいえ、この冬の経験から、多くの労働者が、労働組合への加入と参加によって、自分たちの利益がより効果的に守られると考えていることが分かりました。これらの紛争が組合員数にどのように影響を与えたのかはまだ分かりませんが、通常、紛争が起きると組合員数は増加します。一般的には、組合員数が増えれば増えるほど、(組合が)より大きな力を持つことを意味します(下記参照)。

労働組合は新しい業界に参入しているのか?

はい、労働組合主義が経済の新しい業界に進出する兆しがあります。GMBやUniteのような一般的な組合(業界に特化した組合とは異なる)は、Amazonのような特定の雇用主の下で働く組合員を熱心に勧誘しています。バイデン大統領が連邦補助金を与える条件として、クリーンエネルギー企業に対し、労働組合の承認を掲げていることから、アメリカでは、労働組合がAmazonから強制的に承認を得ることに成功しました。労働条件が劣悪なことが多い「ギグ・エコノミー ('gig economy')」のような従来とは異なる業界でも、労働組合は機能しています。過酷な労働条件によって、従業員が組合に加入し、同僚を「勧誘」するようになることも少なくありません。

私の業界ではどうなるのか?

労働組合が全国的に拡大し続ければ、経済や業界の政策に一定の影響力を持つようになるかもしれませんが、まだ分かりません。しかし、業界に最も影響を与えるのは、労働組合員数の割合です。あなたの会社は、運輸や公益事業のように、組合員数の割合が比較的高い業界に属しているかもしれません。 その場合、ホスピタリティや食品サービス業界のような組合員数の割合が比較的低い業界と比較すると、業界の見通しがかなり異なるかもしれません。

なぜ組合員数が重要なのか?

組合員数の割合が高い業界では、団体交渉がより一般的であるため、個人ではなく、労働組合との間で労働条件が合意されることが多くなります。また、懲戒や苦情申し立ての手続きの際に、労働組合の担当者が従業員を代表する可能性も高くなります。一般的に、労働組合のある企業の労働者は、高い給料をもらい、より良い労働条件を与えられています。

労働組合を承認したくない場合はどうすれば良いか?

(労働組合を承認する)必要はありませんが、たとえ承認しなかったとしても、職場内の組合員の数が一定の値に達した場合、ブレア政権が導入した法定承認手続き(上記参照)に則り、労働組合は全従業員を対象に、承認を得るための投票を強制的に実施することが出来ます。このような従業員の票を巡る争いは、時に激しくなり、双方が、自分のやり方が従業員にとって最大の利益になると必死に説得しようとします。労働組合が勝利した場合、たとえ労働組合と交渉したくない場合でも、給与や労働時間、休暇について交渉に応じなければならなくなります。このため、雇用主は法定承認手続きに詳しい弁護士に相談し、手続きを止められるかどうか、どのように止められるかについて法的アドバイスを受けることが多いです 。

3CSにできること

労働組合について相談がある場合は、雇用法部門のJohn Clinchまでお問い合わせください。John Clinch弁護士は14年間、労働組合の弁護士を務めていました。

John Clinch

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