2025年雇用権利法(Employment Rights Act 2025)が2025年12月18日に国王裁可(Royal Assent)を受けたことに伴い、雇用主は、英国の雇用法における大きな変化に備える必要があります(詳細については1月号のニュースレターをご参照ください)。
本ニュースレターでは、不公正解雇の権利に関する主要な変更点と、それが雇用主に与える影響を詳しく見ていきます:
1. 勤続期間要件の短縮
2027年1月1日から、通常の不公正解雇の申立てに必要な勤続期間が2年から6か月に短縮されます。2027年1月1日時点ですでに6か月以上勤務している従業員は即時に保護対象となり、新規従業員も6か月に達した時点で保護を得ます。この変更により、雇用審判所への申立件数が大幅に増加すると見込まれています。
6か月は26週間の継続雇用として扱われ、解雇有効日(effective date of termination (EDT))で判断されます。雇用主が法定最短通知期間を与えずに従業員を解雇した場合、解雇有効日は最低1週間延長される可能性があります。そのため、意図せず6か月要件を超えてしまわないよう、解雇有効日(法定通知延長分を含む)が26週間に達する前となるよう管理が必要です。通常の不公正解雇の申立てのリスクを軽減するためには、雇用期間が25週間を迎える前に解雇を行う必要があります。
2026年7月1日以降に採用される従業員については、雇用主は積極的に就業状況を管理し、適時に試用期間における見直しを行う必要があります。事前準備として、雇用主は以下の点を検討するべきです:
- 試用期間とその延長規定、通知条項、雇用主が即時解雇できるようにするための解雇予告手当(payment in lieu of notice)条項が適切に盛り込まれているか、雇用契約書のテンプレートを見直すこと。
- ポリシー等を見直し、懲戒手続きが契約外であることを明示し、試用期間中の従業員には適用されない旨を規定すること。
- ラインマネージャーは、行動や能力に関する懸念事項を早期に提起し記録するよう周知されなければならず、それによって適切な措置が講じられるようにすること。
- 有期契約従業員の場合、契約の更新拒否は依然として「解雇」に該当するため、雇用主は有期契約を更新しない判断を、雇用期間のより早い段階で管理する必要があること。
2. 不公正解雇請求の申立期間の延長
2026年10月(正確な日付は未発表)から、従業員が不公正解雇の申立てを行う期限は解雇日から6か月に延長されます(現行の3か月から延長)。早期調停期間が6週間から12週間に倍増され、早期調停が試みられている間は時効期間の進行が停止されることと相まって、雇用主は数か月前に発生した事案に関する申立てに対処する可能性に直面することになります。
事案や出来事について日付、非公式・公式面談の議事録、人事に報告された懸念事項、証言記録などを含め、記憶が鮮明なうちに明確かつ包括的な記録を残すことが極めて重要です。
3. 通常の不公正解雇に対する補償上限の撤廃
2027年1月1日から、通常の不公正解雇の補償金に対する現行の法定上限が撤廃され、通常の不公正解雇に関する補償額は、差別や内部告発に関する請求と同様に事実上無制限となります。
審判所は引き続き「正当かつ衡平(just and equitable)」な基準で、従業員の損失軽減義務、Polkey控除(公正な解雇が想定される場合の控除)、従業員の寄与行為による減額を考慮して、実際の金銭的損失を基準に補償額を算定し続けますが、法定の上限額は廃止されます。これにより、雇用主の金銭的リスクは大幅に増加します。特に高所得者は、上限額の対象とならず、損失を反映したはるかに高い裁定額を請求できるようになるため、通常の不公正解雇に対する請求を追及する意欲が高まるでしょう。
4. 他の種類の雇用に関する請求への影響の可能性
補償上限の撤廃による潜在的な副作用として、法定の上限額や勤続年数要件を回避するために投機的に利用されることがある内部告発や差別などの他の種類の請求が減少する可能性があります。しかし現実には、雇用主の不公正解雇に対する全体的なリスクは依然として増加するでしょう。高所得者による請求は訴訟がより複雑かつ高額になるでしょう。また、和解と訴訟の動向が変化するにつれ、和解交渉も長期化することが予想されます。
5. 雇用と再雇用の制限
2027年1月(正確な開始日は後日確定)から、雇用主が「雇用と再雇用(fire and rehire)」を利用して労働条件を変更する手段は大幅に制限されます。給与、労働時間、年金給付、その他規則によって定められる事項といった特定の主要な契約条件の変更を強制する目的で解雇が行われた場合、従業員が変更に同意しなかったこと、または雇用主が変更後の条件で実質的に同一の職務を遂行する別の人材を採用する意図があったことを理由とする解雇は、自動的に不公正解雇とみなされます。
雇用主のための重要なポイント
雇用主は、勤続期間要件の短縮と申立期間の延長を踏まえ、パフォーマンス管理と試用期間管理のプロセスを適応させる必要があります。
特に、2026年7月以降に採用される従業員は、わずか6か月後に不公正解雇の申し立てを行う資格を得ることになるため、雇用主は必要な解雇を効率的に処理し、問題や潜在的な法的請求を回避する必要があります。
今こそ、契約書のひな形、ハンドブック、雇用関連ポリシーの見直しを開始する時期です。また、ラインマネージャーが変更内容を認識していること、従業員を注意深く管理し、迅速かつ遅延なく問題を特定し対処することが重要となります。
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