英国拡大労働者ビザは、グローバルビジネスモビリティ(Global Business Mobility (GBM)) 制度の一環として、海外企業が幹部社員を英国に派遣し、支社や子会社を設立することを可能にするビザです。まだ英国に拠点を持たないものの、今後の進出を計画している企業が対象となります。
英国での事業展開を進める企業にとって、このビザは適切な人材を現地に派遣するための手段となります。本ニュースレターでは、本制度の仕組みや最近の変更点、企業およびビザ保持者への影響について解説します。
英国拡大労働者ビザとは?
英国拡大労働者ビザは、企業の新規事業の立ち上げのため、シニアマネージャーや専門的なスキルを持つ従業員が英国に渡航することを認める制度です。このビザの申請時点では、英国法人は商業活動の開始前である必要があります。支社や子会社の設立後は、他の英国拡大労働者の派遣や、技術労働者(Skilled Worker)やシニアまたはスペシャリストワーカー(Senior/Specialist Worker)などの他のビザ制度を利用して、人材を英国に派遣することも可能です。
この制度は従来の支社設立代表者(Sole Representative)ビザに代わって導入されたもので、スポンサーシップに関する新たなルールが導入されています。
ビザの対象者
このビザは、親会社である海外企業に雇用されている従業員を対象としています。要件は以下のとおりです:
- 少なくとも12か月間、当該企業で勤務していること(免除要件あり)
- 英国での職務がシニアまたは専門職であること
- 年収が£48,500以上、もしくは職種コードに基づく相場賃金以上であること
- 英国法人から有効なスポンサー証明書(Certificate of Sponsorship)を取得していること
配偶者や子どもも、扶養家族として申請することが可能です。
英国側企業に求められるスポンサー要件
英国法人は、このビザ制度に対応するグローバルビジネスモビリティスポンサーライセンスを取得している必要があります。内務省(Home Office)は、ライセンスを発行する前に、企業の事業計画、財務状況、人事体制などを審査します。
2025年の重要な変更点として、ビザ関連費用を従業員に負担させることは認められなくなりました。スポンサーライセンス料やスポンサー証明書発行費用も含まれ、これらの費用は雇用主が負担しなければなりません。違反があれば、スポンサーライセンスが取り消される可能性があります。
ビザ保持者の主な条件
英国拡大労働者は、スポンサー証明書に記載された業務のみを行うことが義務付けられており、他の職に就くことや、公的資金の受給はできません。また、本ビザカテゴリーは、英国での永住権取得にはつながりません。
ビザは最長12か月間発行され、1回の延長が可能で、最大滞在期間は2年間です。この間に、英国での営業活動を開始する必要があります。2年以内に営業を開始しなかった場合は、このビザ制度の利用は継続できません。
英国での滞在可能期間
このビザでの滞在は最大2年間です。それ以降も英国に滞在するには、他のビザ制度に切り替える必要があります。なお、グローバルビジネスモビリティ全体での滞在期間には上限があり、6年間のうち5年間までとされています(免除対象を除く)。
企業が検討すべき事項
このビザ制度を活用予定の企業は、早期に準備を開始することが重要です。スポンサーライセンスの申請、社内体制の整備、対象従業員の要件確認などを早めに進める必要があります。拠点設立までのスケジュールもあわせて検討し、派遣人数や滞在期間の制限に対応できるよう計画を立てましょう。
3CSにできること
英国拡大労働者ビザは、英国市場に進出する企業にとって有効な選択肢です。適切な準備と法令遵守により、英国での拠点設立の成功に繋がります。
3CS Corporate Solicitorsでは、貴社の英国展開をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。