4月、英国における現代奴隷報告慣行に関する財務報告評議会(Financial Reporting Council FRC )の報告書によると、約10社中1社が、Modern Slavery Act 2015(2015年現代奴隷法、以下、「現代奴隷法」)で求められている年次の奴隷労働・人身売買に関する声明(以下、「現代奴隷法に関する声明」)の公表義務を遵守していないことが判明しました。さらに、3社に1社は質の低い内容のものを発表していることがわかりました。

新しい現代奴隷法案の発表

2022年5月10日、今国会で新たな現代奴隷法案の審議をすることが女王陛下のスピーチで発表されました。この法案は、営利団体や公的機関がサプライチェーンにおける現代奴隷の問題に取り組むにあたり、その説明責任を強化することを目的としています。

本法案は、現代奴隷法を遵守しない組織に対して民事罰を導入することで、対象となる組織に、より高い透明性を求めようとするものです。違反に対する罰則を導入する計画は、これまでにも英国政府から言及されていました。

また既に各組織は、現代奴隷法に関する声明を、内務省(Home Office)が2021年3月に設置・運営を始めたオンラインレジストリで公表するよう奨励されていますが、本法案では政府が運営するレジストリでの公表が義務付けられる予定です。

現代奴隷法の主な要件は何ですか?

現代奴隷法は、英国および英国関連事業が行われている世界の全地域で、強制労働や人身売買が行われないようにすることを目指して導入されました。この目標を達成するため、現代奴隷法は、英国で事業(または事業の一部)を行う、全世界の年間総売上高が3600万ポンド以上のすべての企業に対し、各会計年度ごとに、現代奴隷法に関する声明を公表することを義務付けています。

海外企業でも現代奴隷法の対象となるのでしょうか?

現代奴隷法に関する声明の公表が法的に義務付けられているのは、全世界の年間売上高が3600万ポンド以上で、英国で「実質的な事業展開」を行っている企業です。

つまり、海外企業であっても、英国で実質的な事業展開を行っており、全世界の年間売上高(完全に英国外で活動している子会社の売上高を含む)が3600万ポンド以上であり、その他の基準を満たしていれば、毎年現代奴隷法に関する声明を公表する必要があります。

英国での「実質的な事業展開」とは、どのようなことですか?

英国政府は、組織が英国で実質的な事業展開をしているかどうかを判断する際に考慮すべき要素の例として、以下を挙げています。

  • 英国Companies Houseにおいて会社登記がなされているか?
  • 英国内にオフィスがあるか?
  • 英国で商品やサービスの提供を行っているか?
  • 英国で収入利益を得ているか?
  • ウェブサイトなどを通じて、英国で目に見える形で事業を行っているか?

現代奴隷法に関する声明の公表基準を満たす子会社を複数抱える企業グループもあるかと思います。この場合、子会社が個別に声明を発表することも、親会社が全グループを対象とした1つの声明を発表することも可能です。

現行の現代奴隷法の下では、何が求められているのでしょうか。

最低限必要とされていることは以下のとおりです。

  • 毎年、現代奴隷法に関する声明の公表基準を自社が満たしているかどうかを確認し、(満たしている場合は)会計年度末から6ヶ月以内に当該声明を発表すること(取締役会の承認と取締役の署名が必要)。
  • 現代奴隷法に関する声明について、企業ウェブサイト上の目立つ場所にリンクを設置すること(企業ウェブサイトを開設していない場合は、リクエストを受けてから30日以内に、声明文のコピーを提供すること)。

現代奴隷法に関する声明には、下記の6つの記載事項を記載してもよいとされています。

  1. 自社の組織構成、事業内容及びサプライチェーン
  2. 奴隷労働と人身取引に関するポリシー
  3. 自社の事業とサプライチェーンにおける奴隷労働と人身取引に関する デューディリジェンスのプロセス
  4. 自社の事業とサプライチェーンにおいて奴隷労働や人身取引が生じるリス クの所在、また当該リスクを評価・管理するために行った措置の内容
  5. 自社が適切と考えるパフォーマンスの測定指標に照らした、事業やサプラ イチェーンにおける奴隷労働や人身取引の発生を防止する措置の有効性
  6. 奴隷労働や人身取引に関する社内研修・実施状況

3CSができること

現代奴隷法上必要となる対応や、企業法務や商業法務全般に関するアドバイスが必要な場合、3CSの担当者までご連絡ください。

Kasei Okumura

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