商業用不動産リースにどのような環境施策が適用されるのか?

英国政府は、2050年までに英国の温室効果ガス排出量を「ネットゼロ」にするという法的拘束力のある義務を設定しました。この目標を達成するための計画の一部として、政府は、商業用不動産の家主がリースを継続するために従う必要がある一連の措置を概説しています。

商業用不動産の売却やリースに際しては、エネルギー性能証明書(EPC)の提供が法的に求められています(当該不動産が免除対象である場合を除く)。家主が不動産をリースしたい場合、EPCは少なくとも「E」評価でなければなりません。

また、家主は、現時点で「E」評価を受けている場合は、2027年4月までに「C」評価に、2030年4月までに「B」評価に、評価を引き上げる必要があります。

なぜ家主は注意すべきなのか?

2023年に5年間のリース契約を締結する場合、対象となる不動産は、現在のEPC評価で「E」評価を受ける必要があります。そして、将来的には、契約満了までにEPC評価を「C」評価に引き上げ、さらに、契約を更新する場合は、2030年までに「B」評価まで引き上げる必要があります。したがって、家主はこれらの目標を達成するために、建物の改善工事を行う必要があります。

ほとんどの商業用リース契約では、維持管理(共益費で賄われるもの)の範囲を超える改善は家主の費用負担で行う、とされています。このような工事は侵襲的であり、工事中は賃借人に不便を強いる可能性があるため、家主は、賃借人に与えられるべきサービスや権利、静穏の享受を侵害しないよう、細心の注意を払う必要があります。

場合によっては、賃借人に十分な配慮をしながら工事を行うことが現実的でなく、目標を達成するためには、一旦賃貸借を打ち切り、建物の占有を取り戻す必要があるとの判断に至ることもあるかもしれません。この場合、家主は、改善工事の費用の支出に加えて、賃借人からの賃料収入も失うことになります。

他方で、家主にとっても改善工事を行うメリットはあり、改善工事によって建物の全体価値が高まる可能性があり、また、工事完了後には、家主は、賃借人に対して工事前よりも高い賃料を請求できるようになります。ただし、賃借人主導の市場であれば、必ずしもそうなるとは限りません。

コンプライアンス違反に対する罰則とは?

上記の規制に従わない場合、家主は罰則を科されることになります。罰則は段階的に設定されており、コンプライアンス違反の不動産のリース期間が3ヶ月未満の場合は当該不動産の評価額の10%(最大£50,000)、リース期間が3ヶ月を超える場合は当該不動産の評価額の20%(最大£150,000)の罰金が科されます。

上記の罰則に対しては、いくつかの免除規定がありますが、免除申請に際し、虚偽または誤解を招く情報を提供した場合は、£5,000の罰金が科されるとともに、コンプライアンス違反の家主として名前を公表されます。

賃借人も注意すべきか?

改善の実施には費用がかかります。これらがどのように実施されるかは賃貸契約の条項(およびいくつかの付随する契約)の解釈に依拠します。近時の商業用リース契約における傾向としては、家主が賃借人から共益費という形で維持管理費を徴収するだけでなく、改善費用も徴収する例が増えています。

通常、賃借人は、家主が自らの建物に対して行う改善工事の費用を負担することは望まず、特に、契約終了時に更新のオプションがなく、5〜10年のリース期間しか利益を享受できない短期の商業用リース契約の場合はなおさらです。また、仮に、リース期間満了時に契約が更新されるとしても、改善工事の結果を反映して、賃料の増額が見込まれるのであれば、賃借人としてはより一層、工事費用の負担は望ましくないでしょう。

したがって、賃借人としては、商業用リース契約の締結に際して、家主の改善工事への貢献義務の有無及び内容と、改善工事が自分の事業活動に及ぼしうる影響に注意を払う必要があります。

リース契約に「グリーン条項」を含めるべきか?

現在のところ、公共部門、民間部門ともに、「グリーン条項(環境配慮条項)」を使用する法的義務はありません。しかしながら、リース契約が将来的に時代遅れとならないように、また、企業の報告義務(英国会社法第414CA条)に照らして進歩的な企業であると見なされるように、グリーン条項を導入することが望ましいと言えます。

グリーン条項には、水管理、廃棄物管理(リサイクルを含む)、持続可能な材料の使用や冷暖房サービス、建物内にシャワーや自転車置き場を設ける等の環境負荷が低い移動手段の利用を促進するサービスに関する条項を含むことができます。

これらの取り組みによって、排出されるフットプリントの削減が可能であり、これにより、家主の建物を、環境、社会、ガバナンス(ESG)対策を年次報告の一部として提出する必要がある企業にとって、より魅力的なものにすることができます。

3CSにできること

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Andrew Hollingsworth

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