賃借人にはリース契約を更新する権利があるのか?
賃借人は、the Landlord and Tenant Act 1954 (LTA 1954)の第23条の基準を満たし、かつ、そのリース契約がLTA 1954に基づく保有期間の保証 (security of tenure)を契約上排除していない場合には、契約期間終了時にリース契約を更新できる法定の権利を有します。
LTA 1954第23条の適用に当たっては、以下の5つの点を検討することになります。
- (単なる立入権ではなく排他的占有を伴う)賃借権が存在するか?
- 賃借権はpremises (建物、敷地など、賃借人によって占有可能なもの)について設定されているか?
- 対象となるpremisesは、事業を行うために占有・運営されているか?
- 当該事業は賃借人が行っているのか?
- 当該賃借権は特定の例外項目に該当しないか?
貴社のリース契約の適格性についてご懸念がある場合は、3CSの担当者へお問い合わせください。
保有期間の保証 (security of tenure)の有無による影響とは?
リース契約がLTA 1954の第23条の要件を満たしているものの、その契約上、保有期間の保証規定(LTA 1954の第24条~第28条)の適用排除が合意されている場合、賃借人には自動更新の権利が無いことを意味します。このような場合、賃借人は賃貸人と(更新について)直接交渉する必要があります。賃貸人は、新しいリース契約に応じてくれるかもしれませんが、(賃借人の)要望に応じるべき法的義務はありません。
LTA 1954にて保護されるリース契約は、契約期間が終了したからといって自動的には終了しません。契約期間終了日時点で、LTA 1954 第23条を満たす適格賃借権は、LTA 1954で規定されているいくつかの方法で契約が終了されるまでは、LTA 1954の第24条(1)に基づき、実質的に従前の契約条件と同条件でリース契約が継続されることになります。賃貸人には、賃貸マーケットの上昇等、一時的な状況を解決するために、暫定的な賃料を支払うように裁判所に申請をする法的権利があります。
条件を満たす適格賃借権を有する場合、何をすれば良いのか?
LTA 1954の下でリース契約を更新する場合、賃貸人から更新(又は更新拒絶)しようとするか、賃借人から更新しようとするかで手続が異なります。賃貸人から更新(又は更新拒絶)する場合はSection 25 notice(LTA 1954 第25条に基づく通知)を賃借人に送付し、賃借人から更新しようとする場合はSection 26 request(LTA 1954第26条に基づく申請)を賃貸人に送付することで手続を進めることになります。
Section 25 notice(賃貸人による通知)とは?
Section 25 noticeとは、LTA 1954所定の書式を用いてなされる通知であり、賃借人(賃借人が複数いる場合は全ての賃借人)に対して送達されます。
Section 25 noticeは、適切かつ有効に送達される必要があるため、複雑となる可能性があります。例えば、有効なSection 25 noticeとなるためには、リース期間終了の12か月前から6か月前までの間に賃借人に通知がなされる必要があります。
リース期間が残り6か月を切っている場合はどうすれば良いのか?
契約上の残リース期間が6か月未満を切った場合、リース契約で規定されている契約終了日を単純に超える期間をもって通知を行わなければならないことに注意をする必要があります。
この通知は、有効かつ適切になされなければ効力を生じず、その場合、LTA 1954 第24条(1)に基づき、リース契約が継続されます。リース契約を終了させるためには、その後の通知を適切かつ有効に行う必要があります。
賃貸人によるSection 25 noticeの目的とは?
賃貸人によるSection 25 noticeの目的は、既存のリース契約を終了させた上で、新しいリース契約の条件(賃料以外は既存のリース契約と同条件であるべき)を提示するか、またはリース契約を終了させること、つまり新しいリース契約を締結する意図がないことを通知することにあります。
Section 25 noticeによりリース契約を終了させる場合、賃貸人は、新しいリース契約を提案しない適切な理由を通知に記載する必要があり、それは、LTA 1954 第30条(1)(法定終了事由)に規定される理由のいずれかに該当しなければなりません。
Section 26 request(賃借人による申請)とは?
LTA 1954第26条に基づく正式な申請をすることで、賃借人は新しいリース契約の締結を要請することができます。Section 26 requestは所定の書式に基づき、新しいリース契約の条件案をスケジュールに記載する形で行われる必要があります。賃借人がSection 26 requestにより賃貸人に新しいリース契約の締結を要請する場合、賃借人は同時に既存のリース契約の終了手続も取っていることになります。既存のリース契約は、賃借人のSection 26 requestで指定された(新リース契約の)開始日の直前に終了することになります。
有効なSection 26 requestとは?
Section 26 requestが有効なものとなるためには、法定の要件を満たしている必要があります。中でも賃借人は、Section 26 requestを、適格な賃貸人宛てに確実に、新たなリース契約の開始日として提案した日の12か月前から6か月前までの間に送達する必要があります。賃借人は既存のリース契約の契約期間終了前、又は既存のリース契約が契約期間終了後LTA 1954に基づき継続している場合はその間いつでもSection 26 requestを出すことができます。
賃貸人が賃借人の要請を拒否する場合は、Section 26 requestがなされてから2カ月以内にカウンター通知を出さなければなりません。カウンター通知には、LTA 1954の第30条に規定されている、賃貸人がリース契約の更新に反対するための根拠を明記する必要があります。
賃貸人と賃借人が新しいリース契約やその条件に合意できない場合はどうするのか?
賃貸人と賃借人が新しいリース契約やその条件に合意できない場合、新しいリース契約について裁判所に裁定を求めることができます。
裁判所への申請は「法定期間」が終了するまでに行う必要があります。法定期間は以下のいずれかの日に終了します。
- 賃貸人によるSection 25 noticeでリース契約終了日として指定された日
- 賃借人によるSection 26 requestにて指定された新しいリース契約開始日の前日
法的期間終了までにどちらからも裁判所への申請が無かった場合、賃借人は新しいリース契約に関する権利を失います。手続は終了し、賃借人は退去することになります。
裁判所が命令を下すとどうなるのか?
裁判所が命令を下した後、賃借人が命令された新しいリース条件ではリース契約を更新したくないと決めた場合、賃借人は14日以内に、裁判所に命令の取り消しを求めることができます。
賃借人が取り消しを求めた場合、裁判所は新しいリース契約に関する命令を取り消さなければなりません。既存のリース契約は命令が取り消されてから3か月と21日の間継続します。賃貸人に新しい賃借人を見つけるための合理的な機会を与えるために、裁判所には、適切と考えられる場合はこの期間を延長する権利が与えられています。
賃貸人と賃借人は、裁判所が下した新しいリース契約に関する命令には従わないことを合意することもできます。しかし、この合意は書面で行われる必要があります。
賃借人が裁判所から命令を受けた後14日以内に命令の取り消しを申請しない場合、又は裁判所の命令に従わないことを賃貸人と合意できない場合、賃借人は新しいリース契約を結ぶ法的義務を負うことになります。
3CSにできること
弊所は賃貸人と賃借人双方に対して、リース契約の更新(又は更新拒絶)手続を定期的に支援しています。
リース契約の終了や更新に関してご質問がございましたら、3CSの担当者までご連絡ください。貴社に最適な手続やオプションをご案内させていただきます。