ホリデーペイや休暇の権利を正しく理解することは、いかなる雇用主にとっても落とし穴となる場合があります。今週のニュースレターでは、Smith v Pimlico Plumbers裁判事例における最近の英国控訴院の判決を参考にしながら、請負契約者と契約しているすべての企業が注意しなければならない点に注目します。
- 現在の休暇の権利について
英国1998年労働時間規則(the Working Time Regulations 1998、以下WTR)に基づき、労働者は年間5.6週間の有給休暇を取得する権利があり、これは、労働時間指令(the Working Time Directive、以下WTD)に基づく4週間の休暇と、WTRに基づく1.6週間の追加休暇で構成されます。WTDに基づく休暇は、病気や家族に関する休暇を取得していたために、労働者が有給を取得することができなかった場合など、限られた状況でのみ、翌休暇年度への繰り越しが可能です。本来、自営業者には有給休暇の権利はありませんが、雇用に関するステータスは複雑な問題で、自営業者として扱われていた個人が、後に労働者(または従業員)であると裁判によって認められ、有給休暇を取得できるようになることもあります。
- Smith v Pimlico Plumbers Ltdの裁判事例について
スミス氏はPimlico Plumbers社のために6年間働き、会社はスミス氏を自営業者とみなしていました。2018年、スミス氏はこのステータスに異議を唱え、その結果、裁判所から労働者であると認められました。これは、彼にホリデーペイの権利があったことを意味します。Pimlico Plumbers社で働いていた期間を通して、彼は休みを取っていましたが、その間の支払いは受けていませんでした。スミス氏はPimlico Plumbers社との契約を開始した2005年に遡って、ホリデーペイの請求を行いました。
- 下された決定について
控訴院は、スミス氏がPimlico Plumbers社にて勤務したすべての期間、つまり、2005年8月25日から2011年5月3日に対して、WTDに基づく年間4週間の休暇と関連する無給休暇について支払いを受ける権利があると判断しました。
欧州司法裁判所が2017年にKing v The Sash Window Workshop事例で示した原則が適用され、控訴院はWTDに基づく休暇を取得する機会が与えられなかった労働者は、その休暇を積み立て、翌年に持ち越すことができ、契約終了時にその分の支払いを受ける権利があると決定しました。この原則は、労働者が(無給の)休みを取得したか否かに関わらず適用されます。賃金からの違法な控除に対して請求できる2年の制限は、WTRに基づく請求には適用されず、労働者は契約終了から3か月以内に請求を行うことができます。
控訴院は、雇用主が労働者に対して年次有給休暇の取得を認め、取得を奨励し、休暇年度の終わりに権利が失われることを通知したと証明できる場合に限り、休暇を繰り越すことができる権利は失われるとしています。
- スミス氏の請求が時間切れでなかった理由
雇用審判所および雇用上訴審判所はどちらも、時間切れという理由でスミス氏の請求を棄却しました。彼の最後の無給休暇は2011年1月であったため、彼がその休暇に対する支払いを受けるためには、その日から3か月以内(つまり2011年5月まで)に請求する必要があるという見解を示しました。スミス氏は控訴院に上訴し、契約終了時までのWTDに基づく未払いの休暇全てに対して遡及して支払いを受ける権利があるため、請求の期限は契約終了日から起算して3か月であると主張し、成功しました。
- 雇用主への影響
この事例は、WTDに基づく最初の4週間の有給休暇の権利に関するものであり、残りのWTRに基づく1.6週間(あるいは、雇用主が追加で与える契約上の休暇)に関するものではありません。それでも、この判決は、長期的に個人コンサルタントや自営業者と契約をしている企業、一般的にギグエコノミーにとっては大きな意味を持ちます。これらの個人が、独立した契約者ではなく労働者であることを証明できる場合、休暇取得の有無に関わらず、契約終了時に雇用されていた全期間におけるWTDに基づいた年間4週間の休暇に対する支払いを取り戻すために、ホリデーペイの請求を行うことができます。長期間に渡って務めていた場合、その金額は相当なものになる可能性があります。未払いの金額に対して利息が発生するという法的な見解も見られます。
- 具体的に企業が行うべきこと
企業は、労働者であると主張できるかもしれない独立した請負契約者を特定するために、労働力の監査を実施し、その決定によってもたらされる法的なリスクを評価する必要があります。すべての雇用主は、労働者が、有給休暇を取得する機会を有し、取得が奨励され、取得しない場合は休暇年度の終わりにその権利が失われる、という点を確実に理解できるようなポリシーを持つべきです。もし、雇用主がその責務を果たしていない場合、年次有給休暇の権利は消滅せず、労働者は契約終了時に未取得の休暇に関して支払いを受ける権利を有することになります。
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