英国は、事業拡大を希望する多くの外国企業にとって、世界的に魅力的なビジネス拠点となっています。これは、英国における高いスキルを持つ労働力の存在、その地理的なポジション、確固として透明性の高い法制度や、高度に発達した金融システムの存在など、さまざまな要因によるものと考えられます。世界銀行による「ビジネスのしやすさ」(ease of doing business)ランキングでは、英国は190カ国中8位にランクされており、英国の規制環境は他の国と比較して、現地企業の設立や運営に適していることを意味します。

英国では、様々な形態で事業を行うことができます。すなわち、法人形態(例:会社、有限責任パートナーシップ)、法人以外の形態(例:個人事業主、パートナーシップ)、あるいは英国事業所(UK establishment)を通じて事業を運営する形態が考えられます。本ニュースレターでは、英国でビジネスを開始する外国企業にとって最も一般的な形態である、非公開有限会社(private limited company)及び英国事業所(UK establishment)について説明します。

非公開有限会社(private limited company)(子会社)とは?

非公開有限会社とは、海外の親会社とは別の法人格を持つ英国法人です。海外の親会社の「子会社」または「現地法人」と呼ばれることが多く、海外の親会社が大株主または唯一の株主となることが通例です。以下、非公開有限会社を「子会社」と言及します。

英国事業所(UK establishment)とは?

英国事業所は、外国企業と同一法人であり、別の法人格を持ちません。英国事業所を登録するためには、事業を行うための事業所や支店住所など、英国内にある程度の物理的な拠点がなければなりません。

英国事業所ではなく、子会社を設立するメリットは?

1)         独立した法人格

子会社は独立した法人格を持つため、海外の親会社は子会社の債務について責任を負いません。一方、英国事業所の場合は、英国事業所と同一法人である海外の本社が、英国事業所の債務について責任を負うことになります。

2)         契約当事者

子会社の場合は、子会社自身が契約の当事者となることで、第三者からの承認(規制当局の承認など)やライセンスの取得、不動産取引に携わることが容易になります。一方英国事業所の場合、外国企業が契約当事者となり、契約の準拠法として本国法(すなわち、外国企業が設立された国の法律)を要求することもあります。また外国企業に対して法的な申立てを起こしたり、判決を執行することは困難であるのが一般的です。その結果、英国の顧客や第三者は、英国事業所との取引を躊躇する可能性があります。例えば、新しく設立された英国事業所の銀行口座の開設はより困難であると言えます。

3)         限定的な情報公開

英国に子会社を持つ海外の親会社は、親会社自信の情報について、英国で公開すべき情報が少なくて済むというメリットがあります。財務情報やその他の詳細(取締役に関する情報など)は、海外の親会社についての情報ではなく、英国の子会社に関する情報を提出することが求められています。一方、英国事業所は毎年、外国企業である本社の決算書を提出することが求められており、これは外国企業の決算書がCompanies Houseのウェブサイトを通じて一般に公開されることを意味します。

英国事業所を設立するメリットは?

1)         ガバナンス義務が少ない

英国に子会社を設立する場合と異なり、英国事業所の場合は、英国法上のコーポレート・ガバナンスの義務や取締役の義務は生じません。英国子会社には独自の取締役会が必要であり、取締役会や株主総会を開催しなければなりませんが、英国事業所にはこれらの義務は適用されません。

2)         決算書の作成・監査が不要

英国事業所は、前述の通り外国企業である本社の決算書を提出する必要がありますが、英国での事業に関する個別の決算書の作成・監査の必要はありません。しかし、子会社は独自の決算書を作成する必要があり、子会社の売上高に応じて監査も受けなければなりません。

3)    メンテナンスコストが低い

英国事業所は、英国会社法の下での継続的な書類の提出義務が少ないため、英国事業所は子会社と比較して維持費が安くなる傾向があります。

子会社及び英国事業所の継続的な要件は?

子会社、英国事業所ともに、その設立後はCompanies Houseに(求められる)決算書を提出し、(登録内容に)変更があった場合にはCompanies Houseに通知し、法人税及びVAT申告書を英国歳入関税庁(HM Revenue and Customs)に提出する必要があります(特定の英国事業所にはこの要件が適用されない場合があります)。また、子会社及び英国事業所とも、ビジネスレター、電子メール、ウェブサイトなどに登記上の事務所所在地や会社の登記番号を記載するなど、情報開示の義務もあります。

また、前述の通り、子会社の取締役は英国法に基づく取締役の義務を遵守しなければなりません。したがって、(通常定款に定められている)会社の規則に従うこと、法定帳簿を保管すること、および利害関係のある取引について他の取締役に開示することなどが求められます。

3CSにできること

英国での会社設立または英国事業所を登記する場合は、事前に法律(および税務)上のアドバイスを受け、最適なオプションを選択することをお勧めします。上記の情報は、過去のニュースレターで説明した外国事業者登録制度(Register of Overseas Entities)と混同しないようにご注意ください。英国事業所や子会社の設立、書類の提出に関する継続的な義務の遵守など、会社法に関する情報が必要な場合は、3CSの担当者にお問い合わせください。

Keith McAlister

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