2024年3月6日、英国のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)財務相は、2024年度春季予算案を発表しました。次年度の政府の経済計画の概要はを以下となります。
予算案に関する経済的背景
財務相は、欧州において戦争が継続する中、英国経済は金融危機、パンデミック、エネルギー価格の高騰を乗り越えてきたことを指摘し、また、インフレ率は1月の4%から数か月以内に、あるいは秋期予算案での予想よりも1年近く早く政府が目標としている2%を下回ることを保証しました。
経済成長について
財務相は英国経済は2024年に0.8%、翌年に1.9%、2026年に2.0%成長すると予測され、その後の成長は2027年に1.8%、2028年に1.7%に鈍化すると予測されると述べました。
税制の変更
税金の軽減:
- 社会保険料を2ペンス軽減
財務相は4月6日より従業員給与に課される社会保険料を1ポンドあたり2ペンス軽減すると発表しました。自営業者についても同様の削減が発表されています。ハント氏によれば、本施策によって典型的な従業員は年間450ポンド、自営業者は350ポンドを得ることになります。昨年秋の社会保険料負担軽減と合わせると、年間900ポンドの減税に相当します。
- 子供手当の所得基準を5万ポンドから6万ポンドに引き上げ
4月から、子供手当の減額が始まる所得基準額が5万ポンドから6万ポンドに引き上げられます。また、子供手当の全額が得られなくなる所得水準も6万ポンドから8万ポンドに引き上げとなります。
- 不動産にかかるキャピタルゲイン税の軽減
居住用物件にかかるキャピタルゲイン税の高い税率は28%から24%に引き下げられます。
- 燃料税引き下げ措置の凍結
2022年に導入され今月で終了する予定だった燃料税の5ペンス引き下げ措置が継続されます。
- 酒税率の凍結
酒税は2022年8月から3%引き上げられる予定でしたが、ハント氏は2025年2月まで現在の税率が維持されると述べました。
- 企業向けの「経費控除」の充実
秋季声明において、ハント氏は英国で資本投資を行う企業向けの100億ポンド減税、通称「フル・エクスペンシング」を発表しました。今後はリース資産に対しても税額控除を請求できるようになります。
税金の増加:
- 貸別荘用の税制優遇措置の廃止
2025年4月に家具付き貸別荘に対する税制優遇措置が終了します。
- 複数物件の購入に対する印紙税軽減措置の廃止
Multiple Dwellings Reliefと呼ばれる、1回の取引で複数の物件を購入する人々に対する印紙税軽減措置が廃止されました。
- 非居住者税制度の廃止
財務相は「非居住者」税制が「廃止」され、2025年4月から「現代的でよりシンプルかつ公正な」仕組みに変わることを確認しました。
- 2026年10月からの電子たばこ税およびたばこ税
2026年10月より、電子たばこに対する新たな特別税が導入されます。同時に、たばこ税も一回限りで引き上げられます。
- ビジネスクラス航空券に対する高税率
非エコノミークラス航空券にかかる航空旅客税がインフレを考慮して引き上げられます。
- 石油およびガス企業への超過利潤税の延長
「エネルギー収益課税」として知られる北海の石油およびガス企業に対する特別税の終了が1年間延長され、2029年まで継続されます。
原子力やグリーンエネルギーへの更なる投資
財務相はまた、政府が2つの原子力施設に1億6000万ポンドを投資することを確認しました。1つ目は、アングルシー島またはイニス・モンにある、日立が所有する北ウェールズのウィルファ施設です。政府はここに原子力発電所を開発するパートナーを見つけることを望んでいます。サウス・グロースターシャーのオールドベリにある2つ目の場所も合意に含まれます。
ハント氏は、洋上風力発電や二酸化炭素の回収・貯留(Carbon Capture and Storage)プロジェクトを含む技術を開発するグリーン産業に1億2000万ポンドを割り当てました。
企業へのさらなる支援
- VAT登録の基準値の引き上げ
4月より、VATの事業登録の基準値が8万5000ポンドから9万ポンドに引き上げられます。財務相はまた、Covid中の中小企業向けの政府ローン制度(成長保証制度)を2026年3月まで延長すると発表しました。
- 対象となる映画スタジオの事業税40%軽減措置の2034年までの延長
さらに、ツアー講演やオーケストラの制作については45%の軽減が恒久化され、ツアーの無い制作に対する軽減は40%になります。
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