公正労働機関(Fair Work Agency (FWA))は、2026年4月7日にビジネス・通商省(Department for Business and Trade)の執行機関として設立されました。FWAは、主要な雇用上の権利を管轄する新たな中央執行機関です。同機関は、現在複数の機関によって行使されている特定の機能を調整し、将来的には統合していくことが予定されています。その目的として、コンプライアンスの向上、執行の一貫性の確保、常習的な違反者を重点的に取り締まることにより、法令を遵守している雇用主の負担を軽減することが掲げられています。
FWAの管轄範囲には、休暇手当および労働時間、全国最低賃金の遵守、賃金からの違法な控除、および派遣労働や労働市場基準に関する事項など、主要な法定権利が含まれる見込みです。同機関は、歳入関税庁(HMRC)、安全衛生庁(HSE)、およびその他の規制当局と緊密に連携し、情報を共有することが想定されています。
付与される予定の権限には以下が含まれます:
- 雇用主および給与計算・人事サービス提供者に対し、情報や文書の提出を求める。
- 事業所への立ち入り検査を実施し、担当者への聞き取りを行う。
- コンプライアンス通知および執行通知を発出する。
- 違反に対して民事制裁金を賦課する。
- 影響を受けた労働者への未払金の支払いを命じる。
- 重大または常習的な違反行為で、刑事犯罪に該当する場合は、訴追のために回付する。
- 重大事案において、コンプライアンス違反をした雇用主の名称を公表する。
具体的には、FWAは対象を絞ったリスクベースの検査を実施し、コンプライアンス違反の多い業種においてテーマ別監査を開始し、労働者からの苦情に対応し、優先課題に関するキャンペーンを実施します。
休暇記録
過去における過少支払いや計算ミスの事例を踏まえ、休暇手当および記録管理は早期の優先課題になることが見込まれています。
雇用主に対する新たな義務は、1998年労働時間規則(Working Time Regulations 1998)第16B条および2025年雇用権利法(Employment Rights Act 2025)第35条によって導入されました。これらの義務により、雇用主は、各種法定休暇規定の遵守を示す適切な記録を、6年間保持することが求められます。
雇用主は、以下を記録する必要があります:
- 労働者の雇用形態および勤務時間の取り決め:フルタイム、パートタイム、変動時間、ゼロ時間、臨時雇用、不規則時間のいずれに該当するかを含む。
- 労働時間記録:時間外労働および代休(time off in lieu)の取り決めを含む、1日および1週間あたりの実際の労働時間。
- 休暇付与日数:年間の一部のみ勤務する労働者や不規則時間労働者に対する按分計算方法を含む、各労働者の法定年次休暇日数や契約上の休暇付与日数。
- 休暇の累積および繰り越し:休暇年度を通じた累積計算、傷病休暇、家族休暇、またはその他認められる類型に基づく繰り越しの記録、および繰り越しの法的根拠。
- 取得した休暇:休暇を取得した日付、該当する休暇年度、および残日数。
- 休暇手当の計算:用いた方法(例:関連する基準期間における平均通常報酬)および基礎データ(例:必要に応じてコミッション、時間外手当および各種手当を含む、52週間の平均給与データ)。
- 給与記録:可能な限り休暇手当項目を個別に記載した給与明細や給与計算記録、および支払われた調整額や未払金。
- コミュニケーションおよびポリシー:休暇ポリシー、あらゆる集団合意(collective agreement)、および労働者への権利通知、未使用休暇の失効に関する注意喚起、繰り越しの権利に関する通知等のコミュニケーション。
雇用主は、記録作成日から少なくとも6年間、記録を保管する必要があります。
記録の保管方法
雇用主は、これらの記録の作成および保管方法について柔軟性があります。記録は、オンライン管理システム上でも、表計算ソフトを用いた手作業で保管することも可能です。雇用主は、既存のシステムが将来の検査に必要なすべての関連情報を記録しているか確認すべきです。
データ保護
雇用主は、英国一般データ保護規則(UK GDPR)に沿って記録を管理しなければなりません。
FWAによる執行
FWAは、リスクの兆候が見られる場合または苦情が申立てられた場合に、インテリジェンス主導型の検査を実施し、雇用主に対して情報提供を求めることが見込まれています。雇用主は、所定の期間内に記録を提出し、現地訪問や聞き取り調査に協力するよう求められる場合があります。
違反が認められた場合、FWAは、一定期間内の是正措置を求めるコンプライアンス通知を発行したり、民事制裁金を賦課したり、影響を受けた労働者への未払金の計算および支払いを雇用主に命じたりすることがあります。重大または常習的な事案では、雇用主の名称が公表される可能性があります。また、検査官の職務執行妨害や記録の故意の改ざんなど、特定の行為は刑事犯罪に該当し、刑事責任を問われる可能性があります。
また、コンプライアンス違反は、給与からの違法控除や労働時間規則違反を理由とする雇用審判所への申立てリスクも高め、それに伴う訴訟費用、未払金への遅延利息、および管理対応の時間的負担をもたらします。特に、コンプライアンス違反が公表された場合、レピュテーションリスクも甚大です。
雇用主が今すぐ取るべき対応
具体的な対策としては、以下が挙げられます:
- 特に、時間外労働、コミッション、不規則時間労働者および年間の一部のみ勤務する労働者が対象となる場合、ポリシー、休暇付与日数、および休暇手当の計算について監査を行う
- 休暇記録が完全かつ正確であり、少なくとも6年間は保管されていることを確認する
- 実務運用が非公式に変化してきた場合、または過去の過少支払いや記録の欠落が疑われる場合には、早期に法的助言を受ける
今すぐ対策を講じることで、雇用主は問題の発生に先手を打つことができます。
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- 管理職に対して研修を実施し、休暇に関する日常業務がポリシーに沿ったものとなるよう徹底する
- ポリシーおよび手続きを監査し、将来の検査に対応できるよう万全を期す
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