フレキシブルワーキングオフィスワークへの復帰が求められている現在、フレキシブルワーキングの申請、つまり在宅勤務の継続の申請に直面しているクライアントが増えています。このような申請に対して、雇用主はどのように対応すればよいのでしょうか?
フレキシブルワーキングとは?
フレキシブルワーキングとは、労働時間や勤務時間帯、または労働場所に関連して、従業員が希望する労働条件に変更することを意味します。
誰が申請出来ますか?
誰でも非公式に申請することができますが、勤続26週間以上の従業員は、英国1996年雇用権利法(Emplyment Rights Act 1996)に基づき、フレキシブルワーキングの申請を検討してもらう法定の権利があります。ただし、法的な申請は12ヶ月間に1回しかできないので注意が必要です。
申請には何が必要ですか?
日付を記入し、求めている変更内容と従業員が開始を希望する時期を明記しなければなりません。また、申請された変更が雇用主に影響を与えると考えられる場合は、その影響について説明し、その影響にどのように対応するか、従業員自身の意見を述べる必要があります。また、法的な申請であること、以前にも申請したかどうか、いつ申請を出したかを記載する必要があります。申請にこれらの情報が含まれていない場合は、技術的な理由で申請を却下することができます。しかし、これはリスクの高い戦略であり、従業員は12ヶ月ルールの影響を受けることなく、いつでも法的な申請を行うことができます。
このような申請を受けることが予想される場合には、従業員は記載する必要のある情報、および企業の手順をポリシーとして文書で定めておくことが望ましいです。弊所では、適切なポリシーの作成をお手伝いいたします。
申請にどのように対応すればよいのでしょうか?
適切な方法で真摯に検討し、3ヶ月以内に最終決定を書面で回答する必要があります。申請を承認する場合は面談の必要はありませんが、承認しない場合は、従業員がどのような変更を求めているのか、それがビジネスと従業員にとってどのようなメリットがあるのかをよく理解するために、できるだけ早く従業員と個人的に話す機会を設けることが望ましいでしょう。その際、従業員に同僚の同伴を認めるべきであり、申請を拒否する場合には上訴を認めることを検討すべきです。
承認するかどうかはどのように判断するのか?
申請された労働条件の変更が従業員(およびビジネス)にとってどのようなメリットがあるかを検討し、変更を実施することによる悪影響と比較する必要があります。従業員が業務上のミーティングに出席する必要性など、業務上および日常的な問題について考える必要があります。申請を承認する、または修正して承認する場合は、変更がいつ、どのように履行されるのが最適かを従業員と話し合う必要があります。確信が持てない場合は、試用期間を設けることに同意することができますし、最終決定を下すのを可能にするため、さらに3ヶ月間延長することにも同意するかもしれません。
どのような理由でも拒否できるのですか?
いいえ、法律で定められた1つ以上のビジネス上の理由でなければなりません。決定が合理的であるという具体的な要件はありませんが、誤った事実に基づいて決定が下された場合には、従業員は異議を申し立てることができます。その理由とは次の通りです。
• 追加コストの負担
• 既存のスタッフの間で仕事を再編成することができないこと
• 追加スタッフの採用ができないこと
• 品質への悪影響
• パフォーマンスへの悪影響
• 顧客の要望に応える能力への悪影響
• 従業員が希望する労働時間では十分な仕事ができないこと
• 予定されている社内の組織再編
その他の法的な要素はありますか?
申請を検討する際には、従業員を不法に差別してはなりません。つまり、国籍などの保護特性を理由に申請を却下してはいけません(これは直接的な人種差別になります)。その申請は、障がいを理由とした合理的な調整の一つかもしれません。さらに、例えば、すべてのスタッフがオフィスでフルタイムで働くことを要求することは、育児をする傾向のある女性従業員に対する間接的な差別となる可能性があります。この要求が上記のようなビジネス上の考察を伴った、正当な目的を達成するための相応な手段である場合、間接的な差別を正当化することができます。場合によっては、フレキシブルワーキングを認めないことが、みなし解雇の根拠になることもあります。
申請を承認する場合、どうすればよいのでしょうか?
新しい契約書やレターといった形式で、条件の変更を記載した書面を発行する必要があります。そうすれば、誰もが合意内容を明確に理解することができます。
申請を拒否する場合、従業員は何ができますか?
従業員は雇用審判所に申し立てをすることができ、審判所は決定の再考および/または補償として最大8週間分の給料を命じることができます。審判所は、その決定の背後にある商業的な合理性を疑問視したり、審判所独自の決定によって雇用主の決定を置き換えることはできません。しかし、企業の手順と、申請を真摯に受け止めたかどうかを検討することができます。また、雇用主の決定が正しい事実に基づいているかどうか、拒否理由が法的に認められた理由の範囲内であるかどうかを検討することができます。
そのため、フレキシブルワーキングの申請に対応する場合には、法的なアドバイスを受けることをお勧めします。