パンデミックの影響で、クライアントが対処するべき多くの新たな問題が生じています。その中でも特に厄介なものの一つが有給休暇です。通常は簡単に処理できるものですが、一時自宅待機(furlough)やCovid-19、旅行に行かれないことにより、有給休暇の権利にどのくらい影響があるのか、多くの企業にとって不明確です。また、復帰したスタッフが同時期に休暇を取得したり、休暇年度末に急いで休暇を取得したりすることを心配する声もあります。ここでは、弊所に問い合わせの多い質問をいくつか取り上げ、計画を立てる際や、苦情や裁判請求への対応を回避する際に役立つ可能性のある、重要なルールを紹介します。
スタッフに有給休暇を取らせることはできますか?
はい、できます。休暇日が契約書で定められていたり、(例えばクリスマス時期に)職場が閉鎖するためにスタッフ全員が一斉に休暇を取得することがあります。しかし、スタッフに休暇を取るよう指示することもできます。そのためには、休暇日数の2倍の長さの通知期間が必要です。例えば、1週間の休暇を取得する場合には、2週間前の通知です。有給休暇の申請を拒否することもできます。休暇を拒否したり、休暇を取らせたりできることで、スタッフが一度に全ての休暇を取得しないようにすることができるため、事業計画に役立てることができるでしょう。
一時自宅待機(furlough)の影響はありますか?
いいえ、影響ありません。同じルールが適用されます。スタッフが自宅で一時自宅待機(furlough)(あるいは柔軟な一時自宅待機(furlough)の契約を)しており、仕事をしていない場合でも、休暇を取らせることができます。パンデミックの制約のために旅行することができないことは問題ではありません。一時自宅待機(furlough)で給料が減らされていたとしても、休暇期間中は通常の100%の給料を支払わなければならないことに留意してください。
なぜスタッフに有給休暇の取得を奨励しなければならないのでしょうか?
スタッフの立場からすると、年度末までにすべての権利を取得しなければ休暇を失う可能性があるからです。有給休暇は、精神的な健康やモラルにとって重要なものです。休暇の一部を新たな有給休暇年度に繰り越すことができるかもしれません(以下参照)が、全ての休暇に当てはまるわけではありません。また、雇用主の立場からすれば、労働者に休暇の取得を推奨しなかったり、労働者が休暇を取得することを困難にさせたことで労働者が休暇を取得しなかった場合には、1998年労働時間規則(the Working Time Regulations 1998)に基づく賠償を主張される可能性があります。これは、一時自宅待機(furlough)期間中も通常期間と同様に適用されます。したがって、スタッフが必ずしも年休休暇を取得しようと思っていなくても、有給休暇を取得するよう定期的に促すことが良い取組でしょう。
スタッフが一時自宅待機(furlough)中に休暇を取得していない場合、今年または来年に有給休暇の更なる繰り越しを認めることができますか?
繰り越しを認めることはできますが、限られた範囲内であり、しかも複雑です。4週間(フルタイムの従業員の場合は20日間)を越える未取得の休暇は、通常は合意で処理することができるというのは良いニュースです。企業は通常、日数の繰り越しに関するポリシーを持っており、5日または8日の日数に制限して、その後の一定期間内に取得しなければならないという条件をつけている場合があります。必要に応じてスタッフとの契約を一時的に変更したり、貴社のポリシーを緩和したりすることができます。別の手段として、企業は未取得の休暇を「買い取る」こともできますが、これは契約上の休暇に限られています。つまり、5.6週(またはフルタイム従業員にとっては28日)の法定最低休暇数を超える休暇についてのみです。
繰り越せる未取得の休暇がもっとある場合には、どうなるでしょうか?
恐らく、多くの場合にはこれらの繰り越しはできないでしょう。問題は、法定最低休暇の4週間を、現在の有給休暇年度に取得しなければならないという点にあります。パンデミックの間、一部の労働者は4週間の休暇取得に苦労するであろうとの認識から、政府は新たな規則である2020年労働時間(コロナウイルス)(修正)規則(Working Time (Coronavirus) (Amendment) Regulations 2020)を導入しました。この新規則は、「いかなる休暇年度においても、(労働者、雇用主またはより広範な経済や社会を含む)コロナウイルスの影響の結果として、労働者が一部または全部の休暇の取得を合理的に実行できなかった場合に」、4週間の休暇を現在の有給休暇年度から2つの有給休暇年度に繰り越すことを認めるものです。これは、業務上または事業上の理由で職場に行かざるを得なかったことを意味すると解釈されているため、単なる一時自宅待機(furlough)は対象ではありません。一時自宅待機(furlough)のスタッフが4週間の休暇を取得せず、新規則が適用されない場合には、スタッフは有給休暇を永久に失うことになるでしょう。したがって、このような状況で責任を負わないようにするために、休暇の取得を推奨することが必要です。
産休や長期の病気休暇のスタッフについてはどうですか?
彼らは有給休暇を取得できないため、特別な規則が適用されます。有給休暇は継続して発生し、産休や病気休暇が終了した時点で取得することができます。