多くの企業はこれまでのスタンスを変え、通常の職場で仕事をする時間を増やすように従業員に求めていることが分かってきました。GoogleやApple、Twitterといった多国籍企業は、従業員を職場に戻していると報道されており、またKPMGの公表したCEO Outlookによると、英国のCEOの62%が、伝統的にオフィスワークに携わっていた従業員は、今後3年間のうちに、フルタイムでオフィスに戻ってくると予測しています。
雇用主が気を付けるべき要点は何か?
より多くの従業員の職場復帰を検討している雇用主は、この移行過程をコンプライアンスに則って成功させるために、慎重に対応する必要があります。雇用主は、雇用契約(それが既存のものであれ新規のものであれ)、フレキシブル勤務の申請、潜在的差別、職場でのストレスや健康に関連した不服申立てに関する法的立場に注意を払う必要があります。
ハイブリッドワーク―雇用契約に対する影響
130社以上の企業を対象に実施した弊所の調査(2022年12月実施)によると、80%の企業はハイブリッドワークを導入し、そのうち50%以上の企業は週に2‐3日の在宅勤務を採用しています。職場復帰を求める雇用主からの圧力は高まっていますが、この数字はハイブリッドワークが導入され、現在一般的な慣行となっていることを示しています。このことは、雇用契約にも影響を及ぼします。
(i) 既存の雇用契約への影響
雇用契約書には従業員が働くことを想定している場所を意味する「職場 (‘place of work’)」に関する条件が含まれています。大半の従業員は、パンデミック中に「職場 (‘place of work’)」が変わり、リモートワークをしていました。これは、従業員の契約が変更されたことを意味します。しかしながら、これは必ずしも雇用契約書が明示的に変更されたことを意味するものではありません。
リモートワークへの変更は黙示的な契約条件と見なせるのか?
では、職場復帰を求める雇用主からの圧力が高まっていることに対して、従業員は、この契約の変更によって、在宅勤務の継続を認める黙示的な契約条件が盛り込まれたものであると主張できるのでしょうか。
従業員が黙示的な新しい職場 (place of work)に関する条件を主張できるか否かは、その変更が一時的なものと見られたか、恒久的なものと見られたかによって異なります。リモートワークやハイブリッドワークの取り決めがパンデミック時の政府のガイドラインに基づくものであったとすれば、雇用主としては、契約条件の恒久的な変更は意図しておらず、一時的なものでしかなかったと主張することが出来ます。そして、雇用主としては、従業員は今(会社の方針に応じ)より定期的または恒常的に職場に戻りつつあるのだと主張できます。ただし、部分的な職場復帰を認める場合は、包括的なフルタイム契約の義務を維持するために、慎重に文書化し管理する必要があります。
どのような場合に職場 (place of work)の恒久的な変更と見なされる可能性があるか?
一方、従業員が職場 (place of work)の恒久的な変更がなされたと証明できた場合には、問題が生じます。例えば、雇用主が従業員との相談やその同意なしにオフィスの場所を移転させたとします。この場合、従業員を新しいオフィスで働かせる意図はなく、在宅勤務を恒久的な措置とする意図だったと判断される可能性があります。そのような主張が通るかどうかの是非はそれぞれの状況に応じて検討される必要があり、また既存の雇用契約書の考察も必要となります。
(ii) 新規の雇用契約への影響
全ての新規雇用契約書は、雇用主が職場を柔軟に定義できるような文言を含むべきです。ハイブリッドワークポリシーを明確に雇用契約書またはスタッフハンドブックに記載することも効果的です。もし企業が、より多くの職場での勤務時間を要求するのであれば、その点を新規の雇用契約書の標準的な文言に反映させる必要があります。勤務時間の変更リクエストに対しては、従業員が希望すれば、フレキシブル勤務の申請請求に対する方法で対応することができます。
3CS にできること
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