英国首相は、政府が策定したロックダウンから回復へのロードマップの第4段階を、7月19日から予定通り実施することを確認しました。これにより、強制的な社会的距離やマスク着用、屋内外での集合人数の制限の解除などが行われます。「可能な限り在宅勤務をする」という政府のアドバイスも終了しますが、職場への復帰については「段階的に」としています。 また、先週、8月16日以降、ワクチンを2回接種した人は自己隔離の義務がなくなり、Amberリストの国から帰国しても隔離する必要がないことが発表されました。 ここでは、これらの重要な変更に対応するために、雇用主が直面している即時的および長期的な問題をいくつか見てみましょう。
従業員に予防接種の状況を尋ねることはできますか?
政府は、介護施設のスタッフに予防接種を義務付ける法案を間もなく可決する予定ですが、その他の分野での予防接種は任意です。 雇用主がそのような情報を処理する法的根拠を持ち、英国GDPRにおける「特別カテゴリーデータ(すなわち健康関連情報)」を処理するための条件を遵守している限り、従業員に予防接種の状況を自発的に開示するよう求めることができます。例えば、法的根拠としては、COVID-19に対して依然として脆弱な人々に対する健康と安全の義務を果たすために情報が必要であるということが考えられます。
予防接種を受けたかどうかを教えてくれない場合、懲戒することはできますか?
ほとんどの状況では、ワクチン接種状況を開示していないことを理由に誰かを懲戒することは妥当ではなく、強制的なワクチン接種方針を課すべきでもありません。しかし、Covid-19ワクチン接種方針を導入して、スタッフにワクチン接種を推奨し、要求に応じてその情報を共有することを検討してもよいでしょう。
これは、Covid-19のリスクアセスメントをする必要がなくなったということでしょうか?
そうではありません。フェイスマスクや社会的距離を置く義務が廃止されたとしても、雇用者はスタッフに対する安全衛生上の義務を負っています。 物理的な職場に戻ることについて、スタッフと話し合う必要があるでしょう。また、すでに出社している場合は、安全衛生に関する変更点について相談してください。 妊娠中のために予防接種を受けていない従業員がいるかもしれません(妊娠中の従業員に対しては、特定のリスクアセスメントを実施する必要があります)。従業員の中には、重度のアレルギーなどの理由で医学的に予防接種を受けられない者や、Covid-19の影響を受けやすい基礎疾患を持つ者がいるかもしれません。 従業員およびその同僚に対するリスクを評価し、合理的な緩和策を講じる必要があります。また、職場での感染を抑制するために、適切な衛生基準の維持・奨励、手指消毒剤の継続的な提供、可能な限り良好な換気の確保など、何ができるかを検討することも必要でしょう。政府はまもなく、段階的な職場復帰に関するさらなるガイダンスを発表するものと思われます。
スタッフが希望する場合、在宅勤務を継続させなければならないのですか?
いいえ、従業員は雇用条件に沿って、会社の合法的な指示に従い、会社が求めるときに職場に戻らなければなりません。しかし、従業員が障害に起因する特別な要求を持っている場合や、Covid-19に対してより脆弱な状態であることをあなたに伝えている場合には、合理的な調整を行う必要があるかどうかを考える必要があります。
「ハイブリッド型 勤務体系」についてよく分からないのですが、何を考えれば良いでしょうか?
多くの企業が、「ハイブリッド型 勤務体系」(在宅勤務と職場勤務の併用)の導入を検討しています。その理由は、Covid-19の継続的な影響に関する不確実性、従業員の維持と採用(特に競合他社が「ハイブリッド型 勤務体系」を導入している場合)、あるいはコスト削減の可能性など様々です。一旦、フレキシブルな勤務形態を永続的に導入にしてしまうと、従業員に週5日の出勤を義務付けることに戻すのは難しい場合があることを留意しておく必要があります。 ビジネスの必要性に応じて、現実的かつ長期的に適切な方法を決定する必要があります。 また、規制上の注意事項が適用されるかどうかも考えてください。
「ハイブリッド型 勤務体系」は導入したくはありませんが、段階的にフルタイムで職場勤務に戻したいのですが、それは可能でしょうか?
はい。スタッフと相談し、規定の移行期間中は職場と自宅の間で勤務時間を分割する必要があり、これが終了すると、フルタイムで職場に戻る必要がある事を伝えます。
しばらく「ハイブリッド型 勤務体系」を試してみたい場合、それでは永続的な決定である必要があるのでしょうか?
「ハイブリッド型 勤務体系」を試したい場合、長期的に組織に適しているかどうかを確認する為に、試験的に実施することを強くお勧めします。最初から従業員の条件を永続的に変更してしまうと、パンデミック前の体制に戻すことを従業員に要求することが難しくなります。 従業員に急な出社を求める権利を常に保持し、自宅勤務を続けることを許可できない状況もあることを伝えてください。例えば、個人のパフォーマンスに問題がある場合や、ビジネス上の必要性が変化した場合などです。しっかりとした在宅勤務ポリシーを策定しておくと良いでしょう。
勤務形態を変更する場合、全員に新しい契約書を渡す必要がありますか?
必ずしもそうとは限りません。現在の雇用契約がどのように規定されているか、そして会社がどのような変更を加えようとしているかによります。例えば、勤務時間の一部を在宅勤務にすることを要求する契約上の権利があるかどうかを確認することができます。モビリティー条項がある場合でも、それはかなり一般的なものである可能性があるので、新しい取り決めに対して従業員の明示的な同意を得ることです。いかなる変更も(一時的であれ永続的であれ)、書面に記録し、同意を得る必要があります。
フレキシブル勤務申請については?
従業員は、26週間以上勤務している場合、フレキシブル勤務の申請をすする権利があります。例えば、在宅勤務や勤務時間の短縮・変更など、勤務形態の変更を申請することができます。 従業員が従わなければならない手続きを知っておくために、フレキシブル勤務方針を策定しておくことは良いアイデアです。 従業員が申請できるのは、12カ月間に1回だけです。
フレキシブル勤務申請を拒否することは出来ますか?
はい、申請を拒否できる法的根拠は8つあります。これらは以下の通りです。
- a) ビジネスにダメージを与える追加コスト
- b) その仕事を他のスタッフに再編成できない
- c) その仕事をする人材が確保できない
- d) フレキシブル勤務が品質やパフォーマンスに影響を与える
- e) 顧客の要求に応えることができなくなる
- f) 提案された勤務時間内に行うべき仕事がない
- g) 事業者が労働力の変更を計画している
法定の上訴の権利はありませんが、上訴プロセスを提供することで、要請に合理的に対処したことを証明することができます。拒否が性別などの保護特性に基づく差別にならないように注意し、産休に入る、または産休から戻る予定の従業員からの要請に対応する場合は特に注意してください。
従業員は、当社が要求を拒否した場合、雇用審判所に訴えることができますか?
はい、従業員は雇用主の手続き上の不備に基づいて申し立てすることができます。例えば、合理的な方法で申請を処理しなかった場合、申請に対する決定を通知しなかった場合、却下が誤った事実に基づいていた場合などです。ただし、審判所は、申請を拒否した決定の背後にある商業的合理性やビジネス上の理由を問うことや、申請が認められるべきであったかどうかについての独自の判断を代用することはありません。補償金の上限は8週間分の給与です。
私どもは、このような困難な時期においても、いつでもお客様のビジネスにアドバイスとサポートを提供させて頂きます。ご不明な点がございましたら、お気軽に弊所までお問い合わせください。