財産凍結命令とは何か?

イングランドの裁判所で係争中に、相手方が将来の判決に基づく損害賠償や費用の支払いを免れる目的で資産を処分・売却・隠匿したり、海外へ移転しようとしている場合、申立人は財産凍結命令(freezing injunction)を取得できる可能性があります。これにより、判決のために資産を保全する目的で、被申立人が一定額までの資産を処分することを防止します。

この極めて強力な救済手段は、51年前にイングランドの裁判所によって初めて確立されました。控訴院の裁判官の1人は、これを「法の核兵器」と表現しています。

申立人はいつ財産凍結命令を取得できるのか?

財産凍結命令は、訴訟開始前、訴訟手続進行中、さらには判決確定後にも利用できます。

被申立人または将来の被申立人が資産を判決取得者の手の届かないところへ移す現実的な可能性があり、かつ通知を行うとそのような措置を講じるおそれがある場合、相手方に通知せずに緊急申し立てを行うことができます。

さらに、判決後には、凍結資産に対し判決の執行を支援する目的で財産凍結命令を申請することも可能です。

財産凍結命令の申立人が裁判所に立証すべき事項

裁判所は、申立人がその基礎となる請求について、相当な主張可能性を有している場合にのみ、財産凍結命令の付与を検討します。緊急の凍結命令の審理は事実認定を目的としたものではないものの、申立人は、その実体的請求がこの基準を満たしていることを裁判所に納得させなければなりません。

次に、申立人は、被申立人が凍結命令で求められている額の資産を所有または管理していることを裁判所に立証しなければなりません。これを立証するのは困難な場合があります。

凍結対象となる資産の額を決定するにあたり、裁判所は、被申立人に過度な経済的困難を強いること、ひいては被申立人が事業活動を行えなくなったり、自身の防御のための弁護士費用を支払えなくなったりすることを避けるよう配慮します。同様にして、個人の被申立人についても、生活費や弁護士への報酬を支払うための資金が奪われることはありません。

裁判所は通常、弁護士費用や利息を含めた請求額を基準として、被申立人の凍結対象となる資産額を算定します。

さらに、申立人は、裁判で勝訴した場合に、被申立人が、申立人の手の届かないところに資産を隠蔽しようとする現実的な危険があることを立証しなければなりません。

裁判所は、それぞれの要素を検討した上で、財産凍結命令を発することが公正かつ便宜にかなう(just and convenient)であると確信できなければなりません。また、裁判官は、求められている命令が、将来の執行を確保する必要性に照らして相当なものなのか、それとも単に基礎となる請求について和解を迫るために圧力をかける手段として利用されていないかを判断します。さらに、裁判官は、被申立人が個人の場合は家族への影響、あるいは被申立人が会社である場合はその他の第三者に対する当該命令が及ぼす影響についても考慮します。

財産凍結命令の申立てに関する追加要件

財産凍結命令は極めて強権的な性質を持つため、イングランドの裁判所は最初の申立ての通知を受けていない被申立人に対して、財産凍結命令の申し立てに対する手続き上の保護措置を整備してきました。

第一の保護措置として、早期に「リターンデート(return date)」という、被申立人の立ち会いのもとで当該命令を見直すための審理が設けられます。これにより被申立人は財産凍結命令の取り消しやその条件変更を申し立てることが可能となります。

リターンデートの審理では、被申立人が裁判所の第二の手続上の保護措置に依拠することが極めて一般的です。これとは、申立人が予告なしの形で最初の申立てを行った際、「完全かつ率直な開示(full and frank disclosure)」を行わなかったと主張するものです。完全かつ率直な開示とは、被申立人が(審理に出席していたならば)主張したであろう、申立人の主張を覆す可能性のある事実や論点を、申立人が裁判所に提示しなければならないことを意味します。

申立人がこの基準を満たさなかった場合には、財産凍結命令の取消しおよび被申立人の訴訟費用の支払を命じられる可能性が高くなります。

被申立人に対する最後の保護措置は、申立人は損害賠償の反対保証(cross-undertaking)を提出しなければならないという点です。これは、被申立人が最終的に裁判において申立人の本案訴訟を退けられた場合、財産凍結命令によって被った損失を被申立人に対し補償するという、裁判所に対する法的拘束力のある約束です。また、裁判所は、申立人がこの目的のために十分な資産を有していることを確信する必要があります。疑義がある場合、裁判の結果が出るまで、反対保証の金額を裁判所に供託するよう命じる可能性も十分にあり得ます。

財産凍結命令と特定財産凍結命令(Proprietary Freezing Injunctions)の違い

財産凍結命令は、特定の金額を上限とする不特定の資産を対象とするのに対し、特定財産凍結命令(Proprietary Freezing Injunctions)は、申立人が基礎となる請求について、被申立人が違法に持ち出したため返還すべきであると主張する、一または複数の特定の資産を対象としています。

財産凍結命令が確定した後

申立人が財産凍結命令の取得に成功した場合、申立人は被申立人に対して当該命令を資産の取り扱いを制限するために送達し、また銀行などの凍結対象資産の保有者に対しても同様の命令を送達します。その後、銀行は裁判所の財産凍結命令に従うため、被申立人の銀行口座にある資金を凍結しなければなりません。

金融資産が世界中で容易に移転可能な状況を踏まえ、イングランドの裁判所は長年にわたり、全世界的な財産凍結命令を発令する姿勢を貫いてきました。しかし、この救済処置の申立人は、まずイングランドの裁判所の命令が、資産を保有する銀行が所在する法域の現地裁判所によって承認または登録される必要があるかを確認しなければなりません。これは、財産凍結命令が当該法域内の銀行に対して拘束力を持つことを確実にするためです。

3CSにできること

3CSの紛争解決を専門とする弁護士が、利用可能な選択肢を助言し、財産凍結命令が必要かどうかを検討します。

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Jonathan Cohen

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