事業の買主は、その事業の財務状況について売主が行う説明が真実であることに依拠する必要があります。これには、過去の業績、現在の契約および将来の事業見通しに関する表明が含まれます。こうした財務状況に関する説明は、通常の売買契約書(Sale and Purchase Agreement (SPA))に契約上の保証として盛り込まれます。

買主が事業を取得した後、保証が虚偽であったことが判明した場合、買主は損害賠償を請求することができます。その請求は、売主による保証違反に基づく場合もあれば、売主による詐欺的な保証違反に基づく場合もあります。

契約上の保証違反を立証する場合と、詐欺的な保証違反を立証する場合とでは、金銭面で大きな違いが生じる可能性があります。買主が、売主がSPA上の不正確な保証を行うにあたり詐欺があったことを立証できれば、保証違反について請求可能な損害賠償額に対する契約上のいかなる上限も適用されなくなります。詐欺を立証できれば、買主は事業の取得によって被ったすべての経済的損失を回収する権利を得ることになります。

また、買主が保証違反に基づく請求を開始しなければならない期限をSPAが定めている場合、その期限も自動的に効力を失います。そのため、買主は、例えばSPAの締結から3か月以内に請求を行う必要がなくなります。

従って、こうした紛争における重要な争点は、SPA上の保証について売主による詐欺的違反を立証するために、買主が何を証明しなければならないかという点です。

最近のVeranova Bidco LP v Johnson Matthey plc事件において、高等法院のDias判事は、Johnson Mattheyのヘルスケア事業の売主が、詐欺的に保証違反したとする買主の主張を審理しました。本件において、SPAでは、売主による保証違反が詐欺的なものであることを買主が立証できる場合に限り、買主が保証違反を理由として売主を訴えることが認められていました。

結局のところ、Veranova Bidco LPは、詐欺的違反を立証することができませんでした。同判事による、その立証が認められなかった理由についての説明は参考になります。この判断の考え方は、売主側に、買主の代表者に情報および財務データを提供する多数の交渉担当者がいるような状況で、グローバル事業の買主が詐欺的な保証違反を立証しようとする場合に役立つものです。

また、同判事の判断の考え方は、買主が事業の取得を決定する前に、売主が事業の財務状況について行った虚偽の表明に関する買主の請求にも適用されます。

この文脈における詐欺とは

基本的に、このような事案における詐欺とは、売主が事業の状況について保証をする際に、虚偽の事実を述べていたことを指します。買主は、売主が保証を行った際に、以下のいずれかに該当していたことを立証しなければなりません:

  1. 自分が行う保証が虚偽であることを知っていた
  2. その保証が真実であると信じることなく保証をした
  3. その保証が真実か虚偽かについて単に意に介していなかった

本件における保証の内容とは

Dias判事が検討しなければならなかった中心的な保証は、事業の買主がSPAへ盛り込むことを要求することが多い内容です。売主は、事業の収益性を低下させる可能性のある重要な事業契約について、その変更に関し協議していないことを保証しなければなりません:

「事業に関する保証8.1.2:いずれの会社も…現在、主要契約の重要な条件について、その再交渉が妥結した場合に事業へ悪影響または不利益を及ぼすこととなる再交渉を行っていない。」

売主はこの保証に違反したか

Dias判事は、売主が保証に違反したと判断しました。これは、Johnson Mattheyの医療用品供給契約の1つに、Johnson Mattheyの医療製品の購入者に対して第三者がより低い価格を提示した場合、Johnson Mattheyも同じ価格にあわせることを求める条項が含まれていたためです。同判事は、この価格引下げについて開示すべきであったと判断しました。なぜなら、それが対象事業に悪影響または不利益をもたらすからです。Johnson Mattheyは保証に違反していました。

売主は保証に詐欺的に違反したか

Johnson Mattheyにとって幸いなことに、Dias判事は、売主が保証に違反したことは認めつつも、詐欺的違反には当たらないとの判断を下しました。

事業売却に関する買主との交渉では、Johnson Mattheyの役員4名が同社を代表していました。イングランド法上、4名それぞれの認識は、Johnson Mattheyの法人としての認識となります。

そのため、買主側の弁護士は、Johnson Mattheyによる保証違反は詐欺的違反に該当すると主張しました。彼らは、Johnson Mattheyが、SPA上の保証(事業に不利益を及ぼす可能性のある主要契約の再交渉は行われていない)は虚偽であることを法人として認識していたことを踏まえると、買主が詐欺的違反を立証するために必要なのは、以下のみであると主張しました:

(1) Johnson Mattheyの4名の役員のうち、いずれか1名が関連する事実(Johnson Mattheyが主要契約における価格を引き下げざるを得ないこと)を知っていたこと、および

(2) Johnson Mattheyの4名の役員のうち、他のいずれか1名が、当該事実によって保証が虚偽のものとなることを知っていたこと

本件の事実関係では、Johnson Mattheyの4名の役員のうち、(1)および(2)の両方を知っていた者は一人もいませんでしたが、このような大規模組織においては、驚くべきことではありません。

Dias判事は、この主張を明確に退けました。この主張は法的に誤っていました。保証の詐欺的違反を立証するためには、買主は、Johnson Mattheyの役員のうち1名以上が、以下の両方を知っていたことを立証する必要がありました:

(1) 関連する事実(Johnson Mattheyが主要契約における価格を引き下げざるを得なかったこと)および

(2) 当該事実によって当該保証が虚偽となること

詐欺を立証するためには、保証をした同一人物が、虚偽であることを知っていたか、またはそれが真実であると信じていなかったか、もしくはそれが虚偽であるかどうかを意に介していなかったことが必要となります。イングランド法上、原告が、詐欺を構成する第1の要素を法人内の1人から、第2の要素を別の人物から組み合わせて立証することは認められていません。

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