生活費が上昇し、英国の予算責任局(Office for Budget Responsibility)が景気の後退を認める中、新財務相ジェレミー・ハントは2022年11月17日、英国議会下院において秋期財政報告書を発表しました。以下、企業に影響を与える主な施策について説明します。

税制上の変更点は?

個人所得税(Income Tax):ハント財務相の発表によると、2023 年 4 月 6 日以降、個人所得税の最高税率の閾値が £150,000 から £125,140 に引き下げられる予定です。この変更により、来年4 月から 45%の個人所得税の最高税率を支払う人が 25 万人増加すると試算されています。

所得税の基礎控除額および基礎税率は、(2021年3月に、2026年4月5日までの据え置きが発表されていたところ)2028 年 4 月までさらに 2 年間、現在の水準で維持される予定です。すなわち、2028年4月まで、基礎控除額は12,570 ポンド、37,700ポンドまで基礎税率が適用される予定です。ウェールズおよびスコットランドの場合は異なる所得税率が適用される可能性があります。

配当金収入に対する課税(Tax on dividend income):現在の配当金非課税枠2,000ポンドは、2023年4月から1,000ポンドに引き下げられ、さらに2024年4月からは500ポンドに引き下げられる予定です。

相続税(Inheritance Tax):現行の税率および控除額の変更は発表されませんでした。これらの税率や控除額は 2028 年 4 月まで現行水準で維持されます。

印紙税(Stamp Duty Land Tax):これは、(前財務相の発表した)ミニ・バジェット(mini-Budget)から変更がなかった数少ない措置の一つでした。今回の秋期財政報告書では、印紙税引き下げ措置は残されたものの、ミニ・バジェットで発表されたような恒久的な変更ではなく、2025年3月31日までの一時的な引き下げ措置とされることが発表されました。

譲渡所得税(Capital Gains Tax):財務相は、譲渡所得税に適用される年間控除額の大幅な引き下げを発表しました。2023年4月より控除額は6,000ポンドに引き下げられ、2024年4月からはさらに3,000ポンドに引き下げられる予定です。

法人税率(Corporation Tax):以前発表された2023年4月からの法人税引き上げの計画(25%への増税)に変更はありません。

迂回利益税(Diverted Profits Tax):2023年4月1日より迂回利益税の税率が25%から31%に引き上げられる予定です。

研究開発減税(Corporation Tax – R&D Relief):2023年4月1日より、研究開発税額控除(Research and Development Expenditure Credit)の税額控除率が(13%から)20%に引き上げられる予定です。また、同日より中小企業に対する割増損金の算定料率は130%から86%に引き下げられ(つまり総額で適格研究開発費の186%までの損金算入が可能)、中小企業が損金利用できる損金の算定料率は14.5%から10%に引き下げられます。

特別課税(Windfall Taxes): エネルギー企業に対する「超過利潤税」(Energy Profits Levy)は、2023 年 1 月 1 日より (25%から) 35%に引き上げられます。投資控除の料率は、適格投資支出に対して、80%から29%に引き下げられ、現行の現金価値を維持します。超過利潤税は 2028 年 3 月 31 日に終了しますが、今後 6 年間で 400 億ポンドの税収が見込まれています。

自動車税(Vehicle Excise Duty):2025年4月から、(これまで課税が免除されていた)電気自動車、電気小型トラック、電気オートバイにも自動車税が適用される予定です。

社有車税 (Company Car Tax):納税者及び産業界にとって長期的な確実性を確保するため、2028年4月まで適用される社有車税の税率が発表されました。この税率は、引き続き電気自動車の普及を促進するものとなっています。

付加価値税(VAT):20%の税率に変更はありません。登録基準額85,000ポンドと登録解除基準額83,000ポンドは、2026年3月31日までこの水準で維持されることになりました。

その他に発表された重要な施策は?

全国生活賃金(National Living Wage)の引き上げ: 2023年4月1日から全国生活賃金は時給10.42ポンド(従来は9.50ポンド)に引き上げられます。

カウンシル・タックス(Council Tax)の柔軟性:政府は、2023年4月から、各カウンシルが住民投票を経ずにカウンシル・タックスを引き上げられる金額を年2%から年3%まで拡大し、これによってカウンシル・タックスの上昇限度が引き上げられる見込みです。

ビジネスレート(Business Rates):イングランドにおけるビジネスレートは、2023年4月1日から、2017年の評価以降の不動産価値の変化を反映して更新される予定です。このビジネスレートの上昇およびその他のコスト増を踏まえ、企業を支援するために、136億ポンドに相当する支援パッケージが発表されました。

エネルギー価格保証制度(Energy Price Guarantee Scheme):財務相は、一般家庭のエネルギー代の上限を年間2,500ポンドとするエネルギー価格保証制度を2023年3月31日まで継続することを発表しました。2023年4月1日からは、上限が3,000ポンドに引き上げられます。

生活費支援給付金(Cost of Living Payments):所得に応じて支給されている生活費支援パッケージは800 万世帯以上を支援していますが、そのパッケージが拡張されることになりました。これにより、2023-24 年度中に 900 ポンドの生活費支援給付金が追加されます。また、2023-24 年度の新たな生活費支援給付金として、年金受給者は 300 ポンド、所得に関係なく 障害者給付金の受給者は 150 ポンドを追加で支給されます。

給付金の引き上げ (Benefits Uprating): 2023年4月以降のインフレ率に合わせ、英国政府は現役世代向け給付金や公的年金などの給付金も引き上げる予定です。これらの給付金は、9月の消費者物価指数(Consumer Price Index)のインフレ率 10.1%によって引き上げられます。これらの現役世代向け給付金や公的年金給付金の引き上げの結果、2023年4月から約1,900万世帯の給付金が増額されることになります。

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Keith McAlister

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