顧客から英国現代奴隷法に関するアドバイスを求められる機会が増えています。以下は、私たちに寄せられるご質問の一部です。
英国現代奴隷法とは何ですか?
2015年英国現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)は、英国議会制定法です。この法律は、英国における現代奴隷制の撲滅のためのもので、人身取引や奴隷制に関する既存の犯罪を統合したものであり、現代奴隷制および人身取引を取り巻く(刑事上および民事上の)法的執行力の強化を目的としています。現代奴隷制の撲滅は、深刻な犯罪や組織犯罪と戦う際の国家犯罪対策庁(National Crime Agency)の最優先事項の1つです。「現代奴隷制」とは、人身取引、奴隷制、隷属、強制的または義務的な労働を指します。英国現代奴隷法の罰則は厳しく、個人には相当の禁固刑が、会社には多額の罰金が科せられます。
会社として遵守しなければならないことは何ですか?
現在、会社に以下の基準が適用される場合には、同法第54条に基づき声明を発表することが法的に義務付けられています。
- 会社がどこで設立されたかにかかわらず、「法人」またはパートナーシップであること
- 英国で事業の全てまたは一部を行っていること
- 商品またはサービスを提供していること
- 年間売上高が3600万ポンド以上であること(英国の事業が占める金額の割合が少ない場合も含む)
現在、オンラインでの声明が必須になったというのは本当ですか?
2021年3月11日、既存の英国現代奴隷法(「同法」)の強化策として提案された措置の一つとして、内務省がオンラインによる現代奴隷法に関する声明の登記を開始したことを発表しました。オンライン登記の導入は、一般市民が現代奴隷法に関する声明を見つけ易くし、政府がコンプライアンス状況を監視することを容易にするためのものです。
自社のウェブサイトで声明を発表する場合、政府の新しいオンライン登記にも声明を掲載することが法的に義務付けられているのでしょうか?
今のところは義務付けられていませんが、政府は会社にオンライン登録することを強く推奨しています。内務省は、現在の報告義務を遵守する必要のある会社に対し、新たなオンライン登録を促す旨のレターを送り始めたところです。
自社の声明を登記することを選択しなかった場合、スポンサーライセンスのような移民法に関する立場に影響を与える可能性があるでしょうか?
現時点ではその可能性は低そうですが、内務省が声明の登記と移民法の両方を管理していることは注目に値するでしょう。
声明では、自社のサプライチェーンが奴隷制に関わっていないことを保証しなければならないでしょうか。
いいえ。しかし、サプライチェーンと自社の両方における現代奴隷制のリスクを最小化するために、事業年度内に会社が取った措置および実行した手段を示さなければなりません。これは毎年見直しを行い、最新の声明を発表する必要があります。
自社やサプライチェーンにおいて、現代奴隷制に関する活動が行われていることを認識した場合やその疑いがある場合には、何をするべきでしょうか?
ただちに調査を行い、取った措置を声明内に反映させ、その間に必要があれば当局に報告しなければなりません。これを怠ると、会社に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
政府が現行法の見直しを行っていると聞いています。何が起こっているのでしょうか?
2020年9月に政府は、2019年に開始された「サプライチェーンの透明性に関する意見聴取」に対する回答を発表しました。この回答には、以下のような、現在の要件を強化する多数の提案が含まれています。
- 現在は任意である同法第54条に基づく6つの報告分野の義務化。
- 年間売上高が3600万ポンド以上の公共団体による声明の発表の義務付け。
- コンプライアンス違反に対する民事罰などの執行手段の導入。
- 現在は各社の事業年度に応じて異なる報告期限の単一化。
- どのグループ会社が対象となるか声明内で明記することの義務付け。
- 声明を政府のオンライン登記に登録することの義務付け。
同法に対するこれらの提案された変更がいつ行われるか、未だわかりません。しかし、オンライン登記の導入は、明らかに、同法の執行状況をより厳しく監視し、同法を遵守しない場合により強固な執行を行うための第一歩であるように見受けられます。また、オンライン登記の導入により、法定要件を遵守しない者が、以前よりも風評被害を受けやすくなることも意味しています。
グループ会社の年間の世界売上高は3600万ポンド未満です。声明の発表を避けることはできますか?
はい、現時点ではできます。しかし、売上高が3600万ポンド未満の会社は、声明の発表は義務付けられていないものの、現行の政府の指針では発表が推奨されていることは注目に値します。また、声明の発表を義務付けられている大企業が、取引先である中小企業にも行動規範の遵守を要求する事がますます増えてきています。これには、サプライチェーンが奴隷制に関わっていないことを確認にするため、声明の発表や、奴隷制を撲滅するための措置を講じていることの証明も含まれているでしょう。したがって、声明の発表が法的に義務付けられていなくても、発表することには明確な商業的利益があります。
現代奴隷法に関する声明の準備、掲載、更新に関する支援が必要な場合や、政府が提案している変更について質問がある場合には、ご連絡ください。