5月に英国政府は「フリーポート」計画のモニタリングと戦略を定めた政策を発表しました。フリーポートとは、英国内にありながら、英国内とは異なる税務上・経済上の規則が適用される経済特区のことです。本ニュースレターでは、フリーポートとは何か、どこに設置されるのか、企業にとってどのようなメリットがあるか、について解説します。
「フリーポート」とは？
フリーポートは、グローバルな貿易と英国全土からの投資のハブ機能を果たすことを目指して設置されました。フリーポートは、税制優遇措置、簡素化した通関手続、事業拡大促進や高度技術職の創出のための財政支援といった便益を受けることのできる経済特区です。また、イノベーションクラスターの確立や、新しいビジネスや投資家、革新技術を呼び込むための条件を促進することにも重点を置いています。
「フリーポート」がもたらす主なビジネスメリットは？
海外からフリーポートに輸入された商品は、通常輸入時に英国政府に支払うべき関税を免除されます。すなわちフリーポートにある工場は、原材料を無関税で輸入した上、完成品を英国内の他の場所に出荷する際にのみ関税を支払うか、または英国の関税を支払うことなくそのまま海外に再輸出することが可能です。
イングランド地方にあるフリーポート内の企業は、固定資産税の軽減が申請でき、それは新たに建物を購入する際にも適用されることが確認されています。また、フリーポートに拠点を置く企業は、新しいスタッフを雇用する際、社会保険料（National Insurance）が安くなるというメリットもあります。
フリーポート内の企業は、Freeport Regulation Engagement Network（FREN）を通じて、関連する規制当局に直接アクセスすることができます。これにより、規制当局との早期連携が可能となり、煩雑な手続きや不確実性を最小化することができます。
製造業者がフリーポートによって受けられるメリットとは？
関税や付加価値税（VAT）を支払わなくて済むことでいくつかのビジネスチャンスが生まれます。例えば、従来は高い輸入関税が課されていた外国製部品を使用した商品を製造する、輸出に特化した製造拠点をフリーポート内に設立するといったことが可能となります。中国の経済特区でスマートフォンが組み立てられ、世界中に出荷されているのと同様のことが可能になるということです。
また、製造業者としては、税率差によるメリットを受けるため、フリーポート内に製造拠点を置くことも考えられます。すなわち、最終的な完成品に対する税率が原材料より低税率の場合、製造業者は本来は高税率の原材料をフリーポートに（無税で）輸入し、それを加工した上、完成品をフリーポートから出荷する際には低税率で販売することによって、（価格競争力という）メリットを得ることが可能です。
フリーポートの設置場所は？
フリーポートの設置場所として、イングランドの8箇所およびスコットランドの2箇所が発表されています。
ティーズサイド（イングランド北部のティーズ川を囲む地域）が2021年11月に最初のフリーポートとして、その一か月後にエセックスのテムズ・フリーポートがオープンしました。
フェリックストー／ハリッジ近郊、およびハル近郊のフリーポートも企業が現在利用可能なほぼ全ての税制上の優遇措置が認められています。また、イースト・ミッドランズ空港近郊のフリーポートは、イングランド地方で唯一、空港に近接したものとなります。
他にはリバプール近郊とプリマスのフリーポートが今夏以降にはオープンを期待され、サウサンプトンとポーツマスは、ソレント近郊の都市として、ソレントのフリーポートを共有することになります。
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