2023年7月16日、英国はアジア太平洋地域の11か国からなる環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定 (CPTPP)に加盟すべく条約に署名しました。加盟国には、日本、オーストラリア、カナダ、シンガポール、ベトナムなどが含まれます。英国はCPTPPの創設国以外で初めての、また、欧州諸国としても初めての加盟国となります。CPTPPは、関税の削減、市場アクセスの拡大、規制問題における協力を強化することにより、英国とアジア太平洋地域との貿易を促進することが期待されています。
英国のビジネス・通商相であるケミ・バデノック氏は、「アジア太平洋地域は急速に成長している地域で、2035年までに予想される世界全体の成長の少なくとも50%を占めるでしょう」とコメントしています。
CPTPPとは?
CPTPPは、加盟国間の経済的な統合と協力を促進する貿易協定です。当初、環太平洋パートナーシップ (TPP)として12か国が交渉していましたが、アメリカが2017年に離脱した後、残る11か国が2018年3月に修正版に署名し、CPTPPに改名されました。CPTPPは、2018年12月に7か国の加盟国間で発効し、その後2019年1月にベトナムについて発効しました。残りの3か国(ブルネイ、マレーシア、ペルー)も、この3年で順次批准しています。
CPTPPのカバー分野は?
CPTPPは、商品、サービス、投資、知的財産、労働、環境、eコマース、政府調達、国有企業など、幅広い分野をカバーする協定です。加盟国間の貿易における関税を95%削減または撤廃、また、ルールや基準の統一化、関税以外の障壁の排除、透明性の向上により貿易を円滑化することを目的としています。
CPTPPは世界最大の自由貿易協定の一つであり、世界のGDPの約13%と5億人以上の消費者をカバーしています。
CPTPPが英国とアジア太平洋地域の貿易にもたらすメリットは?
英国はEU離脱以降、貿易パートナーを多様化し、急成長市場であるアジア太平洋地域での存在感を増すことを目指しています。英国は既にCPTPP加盟国のうち7カ国(オーストラリア、カナダ、チリ、日本、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール)との二国間貿易協定を締結しています。これらの協定にはEUの既存の協定から引き継がれたものも、EU離脱後に新たに交渉されたものもあります。また、英国は他の2カ国(マレーシアとベトナム)とも交渉を進めています。
英国政府の影響評価によると、CPTPPへの加盟により、英国のGDPは10年間で180億ポンド増加する可能性があります。英国からCPTPP加盟国への輸出は年間33億ポンドの増加、輸入は年間40億ポンド増加する見込みです。輸入の増加で最も恩恵を受けるのは農業、繊維、機械産業であり、輸出の増加で最も恩恵を受けるのは機械装置、ビジネスサービス、化学品産業です。
CPTPP加盟の主なメリットは?
- 関税の削減: 英国はCPTPP加盟国から低関税または無関税で輸入できるため、生産コストや消費者物価の低下につながります。また、英国が二国間協定を結んでいないCPTPP加盟国(ブルネイ、マレーシア、ペルー)への輸出品に対しても、低関税または無課税の恩恵を受けることができます。さらに、既存の二国間協定において関税割当枠 (tariff-rate quotas, TRQs)や緊急輸入制限(セーフガード)の対象となる一部の商品(例:カナダにおける乳製品や日本における米)についても、市場アクセスの向上が見込まれます。
- 原産地規則: 英国はCPTTP加盟国から輸入する原材料を使用して生産した製品を他のCPTTP加盟国に輸出する際、「原産地規則」に基づく優遇関税の適用を受けることができるようになります。これにより、複数の国から原材料を調達している英国の生産業者の事務負担が減り、柔軟性が増すでしょう。
- サービスと投資: CPTTPは国境をまたぐ貿易や事業進出に対して高水準の市場アクセスと内国民待遇を提供するため、英国はCPTPP加盟国におけるサービス業と投資セクターについて、より多くの機会にアクセスできるようになります。また、規制の問題に関しても、(加盟国間の)協力関係や透明性が強化されることから、メリットがあると言えるでしょう。
- 知的財産: CPTPPは特許、商標、著作権、地理的表示 (GI)、営業秘密の保護に関して高い基準を設けており、英国はCPTPP加盟国において知的財産権をより効果的に保護し、行使することができるようになります。
- 政府調達: CPTPPは政府調達に対して高い水準の市場アクセスと非差別待遇を提供しており、英国はCPTPP加盟国での公共入札の機会により多くアクセスできるようになります。
CPTPP加盟は英国とアジア太平洋地域の貿易にとって重要な一歩となるか?
英国のCPTPPへの加盟は、EU離脱後の英国経済にとって重要な一歩であり、英国とアジア太平洋地域におけるビジネスの双方に大きな利益をもたらすでしょう。
アジア太平洋地域のビジネスにとって、英国のCPTPP加盟は欧州地域の主要な経済との貿易や投資の新たな機会を創出することを意味します。英国は既に、特に金融サービス、教育、技術、クリエイティブ産業などの分野において、多くのアジア太平洋地域の国々との重要なパートナーとなっています。CPTPP加盟は関税や関税以外の障壁を更に削減し、国境を越えた情報のやり取りやeコマースを促進し、知的財産権を保護し、公正な競争を確保することにつながります。また、英国とアジア太平洋地域との間で、気候変動、デジタルトランスフォーメーション、グローバルヘルスなど、共通の課題や関心事についての協力と対話も促進されるでしょう。
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