どのような環境対策が不動産セクターで実施されるのか?
The Climate Change Act 2008(気候変動法2008)にて、英国の温室効果ガス排出量を2050年までに1990年比で少なくとも80%削減するという法的拘束力のある目標が定められ、期日までの5年毎の中間目標が設定されています。
加えて、The Energy Efficiency (Private Rented Property) Regulations 2015とMinimum Energy Efficiency Standards (MEES)制度により、商業用施設に追加のコンプライアンス要件が設けられました。
2018年4月以降、商業用物件のリースにあたっては、対象物件のエネルギー性能証明書(EPC)の評価が少なくとも「E」以上であることが必須条件となりました。2023年4月以降は、すべての既存の商業用リース物件について、EPC上の評価が「E」以上であることが求められます。
さらに、2027年以降、商業用リース物件は、そのEPC上の評価が「C」以上であること、2030年以降は「B」以上であることが法律で義務付けられる予定です。
なぜ家主は気を付ける必要があるのか?
2023年4月1日以降、新規に5年間のリースをする場合は、当然ながら、少なくともEPC上「E」以上の評価を満たす必要があります。これは比較的容易にクリアできる条件です。しかしながら、将来的には、リース契約の満期までに「C」評価以上、更新する場合は、2030年までに「B」評価以上を満たすことが法的に求められます。この条件を満たすためには、より負担の重い改善工事が必要になるでしょう。
法規制を遵守するために必要な改善工事を実施する場合、必ず費用が伴いますが、その費用を誰が負担するかは、賃貸借契約(および付随する契約)条件の解釈によって決定されます。改善工事を実施する間、賃借人の業務に支障をきたす可能性があります。そのため、商業用物件のリース契約をするに当たって、環境改善のための工事の実施について定めたり、その費用の分担を求めようとする場合は、十分に注意を払う必要があります。
現在、商業用リース契約の大半では、(共益費によってカバーされるメンテナンスを除く)改善工事の費用は、家主によって負担されることになっています。改善工事は建物全体の価値を高めることに繋がる可能性があり、家主にとってメリットになります。そうすれば、家主は賃借人に対し高い賃料を請求することが可能になるはずです。しかしながら、賃借人主導の市場では、必ずしもそうではないかもしれません。
賃借人は、賃貸借期間が短い場合には、建物の環境改善に貢献するための費用を負担したがらないでしょう。
家主は現在のリース契約の期間によって、どのようなリスクにさらされる可能性があるかを理解するために、不動産ポートフォリオを確認する必要があります。
免徐規定とは?
The Energy Efficiency (Private Rented Property) Regulations 2015はこれらの要件に一定の免徐規定を導入しています。最も注目すべき内容は以下の通りです。
- 同意が得られないことによる免徐:これは家主が改善工事をするために同意を得ることが必要となる第三者、例えば賃借人や地方自治体から、その同意を得るためのあらゆる合理的な手段を講じた場合に適用されます。改善工事を行うために必要な同意が得られない場合、家主はこの免除条件を利用することができるかもしれません。
- 経済的非効率性による免徐:この免徐条件は、推奨される効率化施策を実施した際の購入・設置費用が7年間に回収できない結果、想定される「エネルギー効率改善」効果が得られない場合に適用されます。これは対策を講じた結果期待される光熱費の節約額が、対策を講じるために支出した費用を上回らないことを意味します。この免徐規定は、非居住用不動産にのみ適用されます。
他の免徐規定が適用される可能性もありますが、適用を検討する前に、法的アドバイスを受けることをお勧めします。
コンプライアンス違反に対する罰則とは?
本規定を遵守しない場合、家主が罰則を受けます。罰則は段階的に適用されます。例えば、コンプライアンス違反の不動産の賃貸借期間が3カ月未満の場合、当該不動産評価額の10%、最大£50,000の罰金が科せられます。コンプライアンス違反の不動産の賃貸借期間が3カ月以上の場合、当該不動産評価額の20%、最大£150,000の罰金が科せられます。
虚偽の免除申告をした場合は£5,000の罰金が科せられ、コンプライアンス違反の家主として公表されます。
リース契約には「グリーン条項」を含めるべきか?
現在のところ、公共部門、民間部門ともに、「グリーン条項(環境配慮条項)」を使用すべきという法的義務はありません。しかしながら、リース契約が将来的に時代遅れとならないように、また、企業の報告義務(英国会社法第414CA条)に照らして進歩的な企業であると見なされるように、グリーン条項(環境配慮条項)を導入することが望ましいと言えます。
「グリーン条項(環境配慮条項)」としては、水管理、廃棄物管理(リサイクルを含む)、持続可能な材料や冷暖房サービスの使用に関する条項、さらに建物内にシャワーや自転車置き場を設ける等、環境負荷の低い移動手段の利用を促進する取り組みに関する条項が考えられます。
3CSにできること
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