外国事業者登録制度とは何か?
この新登録制度は、英国外の国や地域の法律に基づいて設立された全ての外国企業(もしくは類似の法人)が英国において(居住用または商業用)の不動産を所有し、または7年以上の賃貸借契約を締結している場合に、当該外国事業者の「受益者」または「役員」についての申告を義務付けるものです。これに従わない外国事業者は、累積的な罰金を科されたり、不動産取引ができなくなるといった厳しい制裁を受ける可能性があります。加えて、意図的に虚偽の情報を申告した場合は、刑法上の罪となり罰金や禁錮の恐れもあります。
登録期限はいつか?
2022年7月29日と10月21日のニュースレターでお知らせしたように、外国事業者登録制度は2022年8月1日に施行され、2023年1月31日が登録期限となります。30,000以上の外国事業者が本制度の影響を受けること、また本制度を遵守しない場合に起こりうる多額の罰金や刑事罰を考えると、法令遵守のために残された期間は短いと言えます。
なぜ英国政府はこの制度を導入したのか?
英国の国家犯罪対策庁は、(犯罪資金流入についての)監視・防止義務を銀行に課してはいるものの、毎年数千億ポンドもの犯罪資金がロンドンに流れ込んでいると推定しています。こうした資金の大半は、ロンドンの不動産部門に流れ込み、不動産獲得のために使用されています。外国事業者登録制度は、英国政府がそうした状況への対応を迫られた結果成立した、Economic Crime (Transparency and Enforcement) Act 2022(経済犯罪(透明性と執行)法、以下「ECTEA」)の一環として生まれました。
登録対象となる受益者とは誰か?
受益者とは(直接または間接的に)以下のいずれかに該当する者を言います:
• 当該外国事業者の株式または議決権の25%超を有する者
• 当該外国事業者の取締役会の過半数を任命または解任する権利を有する者
• 当該外国事業者に対して重要な影響力または支配力を行使する者
登録対象となる受益者(または複数)が存在する場合、関連情報を取得し、独立して認証し、公開する必要があります。
登録対象となる受益者がいない場合どうなるか?
登録対象となる受益者がいない場合(例えば、いずれの株主の株式保有率も25%を超えない場合など)、ECTEA 4条によると、各役員(each managing officer)に関する情報を申告する必要があります。この点、Companies Houseのガイダンスでも、「…(もし)受益者の存在が確認されなければ、各役員について申告する必要があります…」と記載されています。
では、役員とは誰か?
- ECTEA 44条は「役員」とは「(当該外国事業者の)取締役、マネージャーまたは秘書役」を含むと規程しています。
3CSとしては「役員」の解釈は状況によって判断すべきと考えています。原則として、我々は業務執行を担っている役員が誰かを検討しますが、取締役については、一部ではなく全員が(「役員」に)含まれるべきであると考えています。
認証およびその違反
- the Registration of Overseas Entities (Verification and Provision of Information) Regulation 2022(外国事業者登録制度(認証と情報提供)規則)6条は、(ECTEA上申告を求められる)関連情報について、(適切な書類の審査と客観的な調査を通じて)認証を行う必要があるとしています。
- またECTEA 32条は、登録に際して「誤解を招く、虚偽または疑わしい」情報を提供した場合、刑法上の罪となりうるとしています。例えば、全ての取締役ではなく、一部の取締役の情報のみ提供した場合や、故意に不十分な情報を提供した場合は、この条項に触れる恐れがあります。
外国事業者登録制度の認証者の不足とは?
(ECTEA上の認証を行う)認証エージェントは、英国に拠点を置き、the Money Laundering, Terrorist Financing and Transfer of Funds Regulations 2017(2017 年マネーロンダリング、テロ資金供与および資金移動規制)に基づく監督を受ける機関でなければなりません。問題は、多くの法律事務所や会計士が認証エージェントとしての登録を躊躇していることです。不適切な認証を行った場合の結果の重大性を考慮し、英国法曹協会や公認会計士協会は、会員に対し、必要な専門知識を持っている自信がない限り、(認証業務は)避けるべきであると警告していることがその背景にあります。
3CSにできること
3CSは、ECTEAの適用、登録対象となる受益者や役員の認定について、ご助言いたします。3CSは取引中の不動産に対するECTEAの潜在的影響についても報告いたします。
3CSは認証エージェントとして登録しており、ロンドンを拠点とする経験豊富なチームが、法令遵守のために必要となる登録・認証手続をサポートいたします。登録期限が近づき、需要が急速に高まっていますので、早急な対応が必要となっています。より詳細なアドバイスが必要な場合、3CSのいつもの担当者までお問い合わせください。