基本合意書の目的は何でしょうか?
一般的に、商業施設のテナントは、既存のリースを取得する(譲渡と呼ばれる)あるいは、合意した条件で新しいリースを取得することができます。
テナントが譲渡により既存のリースを取得する場合、その取引は通常、既存のリース条件を参照して当事者間で合意されます。 一般的に、それらの条件はきわめて簡単で、購入価格(プレミアム)や、Rent Deposit Deed(家賃保証金証書)によってテナントに要求される担保について詳細に記載されている必要があります。 多くの場合、このような取引では、大家の同意が求められるのが一般的で、Licence to Assign(譲渡許可書(法律文書))が必要となります。
別の方法として、テナントは商業施設の新規リースを希望する場合があります。 譲渡とは異なり、新たな賃貸契約を締結した場合、テナントは、契約期間、賃料、使用・売却・改修・修繕に関する権利など、賃貸契約に適用される条件について、より多くの交渉を行うことが可能です。
このような取引条件に合意する際には、大家とテナントの双方が、それぞれの商業的利益を代表する独立した代理人を任命するのが一般的です。これは、リース期間と建物の状態を考慮して、賃料の水準を交渉する際に関連してきます。 これらの代理人は、定期借地権付き建物の評価を行う資格を有しており、交渉においてクライアントの商業用不動産の利益が最大化されるように努めます。当事者間で条件がまとまると、大家とテナント、それぞれの弁護士に送られ、法的文書の作成を指示・通知します。これを基本合意書といいます。
基本合意書にはどのような内容を含めるべきでしょうか?
基本合意書は、取引の全体的な範囲を参照することによって、両当事者の幅広い意図を示し、また、法的費用が発生する前に、提案された取引を参照して当事者間の原則の要点を記録することを目的としています。拘束力はありませんが、法的関係を構築する意図が含まれています。当然のことながら、一度取り決めた条件を相手が修正しようとすると、大家も賃借予定者も不満を抱く可能性があります。 そのため、弊所では、取引を進める前に、プロセスの早い段階で、問題点を対処することができるように、両当事者に、それぞれの弁護士に基本合意書を確認してもらい、コメントをもらうことを推奨しています。 基本合意書は、法的文書と同様な詳細で作成されるわけではありませんが、取引をどのように構成するかを決定し、その後の法的文書の作成を迅速に行うことに役立ちます。
基本合意書の冒頭部分には、通常、関連する当事者の詳細、すなわち、大家とテナントの身元、および関連する場合には保証人の詳細が記載されます。次に、物件(または施設)が基本合意書に適切に記載される必要があります。これにより、正確な物件の範囲についての懸念が取り除かれます。
これらが確立された時点で、リース条件自体がに合意されることが重要です。 一般的な条件としては、リース期間、主な金銭的条件(支払うべき賃料、賃料無料期間、賃料の見直し方法(該当する場合)、支払うべきサービス料)、使用条件(テナントが施設内で許可される行為)、売却・転貸の権利、途中解約条項 (break option)、施設内の工事を行う権利、修繕に関する義務などが挙げられます。
通常、リース以外に大家とテナントの間で締結しなければならない書類があるかどうかは、最初に話し合われます.
大家は、テナントの誓約(契約期間中に賃料を支払う能力)の強さを検討します。大家は、新しい賃貸契約を結ぶ際に、Rent Deposit Deed(家賃保証証書)が必要であると判断する場合があります。また、テナントの要望に応じて、Licence for Alterations(改修許可証)が必要となる場合もあります。 以下、これらの書類について順番に説明します。
Rent Deposit Deed(家賃保証証書)は必要でしょうか?
大家がテナントから確実な保証を得るために、テナントに保証人を指名するように要求し、テナントが債務不履行に陥った場合、大家が保証人の提供する保証を行使できるようにすることがあります。 あるいは、大家が現金の保証金を担保として支払うことを要求することもあります。保証金の法的地位はRent Deposit Deed(家賃保証証書)に記載されます。
例えば、店舗を賃貸するために会社を設立され、しかしながら取引実績がほとんどない場合、大家は家賃が期日通りに支払われ、テナントの遵守義務を保証したいと考えるはずです。そのために、大家はテナントにRent Deposit Deed(家賃保証証書)の締結を要求し、大家が例えば、家賃の6ヶ月分などの保証金を確保出来るようにします。 これにより、テナントが債務不履行に陥った場合、大家はある程度の保証を得ることが可能です。
加えて、あるいはそれに代わって、大家は、新しく設立された会社の取締役/株主(あるいは十分な地位を有する者)が、リースにおけるテナントの債務の保証人となることを要求することができます。その場合、書類に保証人の名前が記載されている必要があります。
テナントが賃料(およびその他の費用)を期限内に支払うことができない場合、またはその他の誓約に違反した場合、保証人は個人的に責任を負います。もしくは、家賃保証金がある場合、大家はその違反の範囲、及び指定された条件で家賃保証金を請求することが可能です。
Licence for Alterations(改修許可証)は必要でしょうか?
多くの場合、テナントが希望する用途や仕様に合わせてスペースを設計することができるよう、商業施設は完全に空の状態です。賃貸借契約には、テナントが大家の同意なしに特定の工事を行うことを禁止する条項が含まれています。
そのため、テナントは取引開始時に大家に図面や仕様書を提出し、工事を行うことへの同意を得ることが重要です。これを怠り、同意なしに工事が行われた場合には、将来、テナントがリースを大家に返還する際や、リースを第三者に譲渡する際に、問題が発生する可能性があります。 また、施設内で行われる工事に関して、保険、計画、エネルギー性能なども考慮しなければなりません。 商業施設の工事に着手する前に、必要な法的手続きを行う必要があります。
以下のフローチャートは、商業用リースを利用する際のプロセスを示しています。