不動産のジョイントベンチャー(JV)は、企業同士が資金やノウハウなどのリソースを互いに提供し、リスクを分担しながら、開発や投資プロジェクトを実施するための一般的な手法です。
JVには明確に定まった法律上の定義がなく、関係当事者間の合意に基づいて柔軟に構成されるのが特徴です。本ニュースレターでは、JVの基本的な仕組み、利用可能な法的スキーム、そしてJV契約を締結する際に検討すべき主要なポイントについて解説します。
ジョイントベンチャーとは
不動産JVとは、特定のプロジェクトを共同で実施するために、複数の当事者が締結する法的な合意を指します。各当事者は、資金、土地、ノウハウなど、何らかの価値あるリソースを提供し、合意に基づいて利益とリスクを分担します。
不動産JVは、単独での実施が難しい大規模、または複雑なプロジェクトにおいて特に有効です。英国企業間で広く用いられているほか、海外投資家や場合によっては公共機関が関与することもあります。
一般的な法的スキーム
不動産JVの構成は、プロジェクトの内容や関係当事者に応じてさまざまですが、代表的なスキームは以下のとおりです:
- 合弁会社(Company joint venture):特別目的会社(special purpose vehicle (SPV))と呼ばれる責任限定会社を設立し、不動産の保有およびプロジェクトの管理を行う形式。各当事者は当該会社の株主となるため、責任を限定することができ(有限責任)、ガバナンス体制も明確に整えられます。
- 有限責任パートナーシップ(Limited Liability Partnership (LLP)):より柔軟性が高く、一定の責任保護も得られる形式で、当事者間でより自由度の高い取り決めが可能です。
- 一般パートナーシップ(General partnership):有限責任はありませんが、よりシンプル、または小規模なプロジェクトに適しています。
- 契約型JV(Contractual joint venture):新たに法人を設立せず、契約に基づいて当事者間で協力する形式。設立までの時間が短く済む反面、法的リスクが高まる可能性があります。
重要な契約
JVを成功させるには、適切な契約の締結が不可欠です。中核となるのはJV契約、又は、会社形態を採用する場合は株主間契約です。これらの契約では、各当事者の出資内容、意思決定の方法、利益の分配、JV解消時の対応などが定められます。
このほか、開発契約、融資契約、土地や不動産の譲渡契約などが必要となる場合もあります。公共機関が関与する場合は、追加の規制対応が求められることがあります。
ジョイントベンチャーを行うメリットと課題
不動産JVには、以下のようなメリットがあります:
- 投資および財務リスクの分散
- より大規模または複雑な案件へのアクセス
- 知識や経験の共有
- 特に海外投資家にとって、新たな市場への参入
一方で、法的および商業的リスクも考慮する必要があります:
- 目標の不一致による紛争リスク
- 役割や責任が不明確な場合の混乱
- 意思決定やコントロールの難しさ
- 法人税、キャピタルゲイン課税、印紙税などの税務上の留意点
- 事前に出口戦略に合意しておくことの重要性
3CSにできること
3CSは、英国および海外の企業に対し、不動産JVに関する法的サポートを幅広く提供しています。適切なスキームの選定から明確かつ実務的な契約書の作成まで、皆様の利益を守るため、各段階で的確な支援を行います。不動産JVをご検討の際は、ぜひ3CSまでご相談ください。弊社の専門チームがサポートいたします。