会社を成功させるには、効果的で有能な取締役会が不可欠です。取締役会は、会社の目標と価値を設定し、会社の成功を促進するための戦略に取り組みます。業務執行取締役が主な意思決定者である一方、非業務執行取締役(Non-Executive Directors(NED))の役割の重要性も過小評価されてはなりません。
非業務執行取締役(NED)とは何ですか?
非業務執行取締役(NED)の法律上の定義はなく、英国法上は、業務執行取締役と非業務執行取締役(NED)を区別していません。非業務執行取締役(NED)は、業務執行取締役と同様に、2006年会社法に定められた取締役の義務を負います。したがって、非業務執行取締役(NED)には、業務執行取締役と同じ法的義務、責任、潜在的な責任があります。しかし、実務上、業務執行取締役はフルタイムで会社の日々の経営を行いますが、非業務執行取締役(NED)の役割は主に監督であるため、非業務執行取締役(NED)の義務は、業務執行取締役の義務ほど重くありません。非業務執行取締役(NED)は、業務執行取締役が行う計画や決定に対して、客観的、独立的、建設的な見解を示すことが求められています。
非業務執行取締役(NED)を選任しなければならないでしょうか?
上場会社であれば、そうです。英国の2018年コーポレートガバナンスコード(以下「コード」)は、優れたコーポレートガバナンスを促進するため、ロンドン証券取引所上場企業に適用される原則です。原則は、取締役会は業務執行取締役と非業務執行取締役(NED)を適切に組み合わせ、特に独立した非業務執行取締役(NED)を含むべきであるとしています。コード上、非業務執行取締役(NED)と独立した非業務執行取締役(NED)は区別されています。全ての非業務執行取締役(NED)には独立した見解と判断の提供が期待されていますが、独立した非業務執行取締役(NED)は利益相反を引き起こす可能性のあるあらゆるつながりと無関係でなければなりません。これは、特定の個人や少人数のグループが、取締役会の意思決定に過度な影響を与えないようにするためです。コードは、優れたコーポレートガバナンスを行う際に、非業務執行取締役(NED)がいかに重要かを示しています。議長を除く少なくとも半数の取締役会メンバーは独立した非業務執行取締役(NED)でなければなりません。また、非業務執行取締役(NED)には、業務執行取締役の選任および解任という重要な役割もあります。
上場会社でなくとも、非業務執行取締役(NED)がいる方が良いでしょうか?
一言で言えば、そうです。非上場会社に非業務執行取締役(NED)がいることは珍しいことではなく、最近この傾向が増加しています。非上場会社はコードの対象ではありませんが、非業務執行取締役(NED)の選任は、色々な意味で有益です。非業務執行取締役(NED)は、様々な業界で得たスキルを用いて、業務執行取締役のスキルや経験を補完します。非業務執行取締役(NED)は、客観的かつ独立的な見解を提供して、業務執行取締役の相談役として機能します。また、非業務執行取締役(NED)は、建設的な課題を提起し、業務執行取締役が会社の持続的な成功に向けた意思決定ができるよう支援します。非業務執行取締役(NED)は、様々な環境、様々な役割で働いて得た豊かな経験をもたらします。以上の理由から、非業務執行取締役(NED)は取締役会に新鮮な視点をもたらすことができます。これらの実務的なメリットに加えて、非業務執行取締役(NED)がいることで会社の評判も向上し、クライアントや投資家にとってより魅力的となることに役立ちます。
非業務執行取締役(NED)と業務執行取締役の選任は、どのように異なりますか?
監督という役割から、非業務執行取締役(NED)の報酬は、フルタイムで会社の日々の経営を行う業務執行取締役より低くなる傾向にあります。非公開会社はコードを遵守する必要はないですが、コードでは、非業務執行取締役(NED)の報酬として、ストックオプションやその他業績連動報酬が認められていないことは注目に値します。また、業務執行取締役は通常は会社の従業員ですが、非業務執行取締役(NED)は異なります。非業務執行取締役(NED)は選任レターにより雇用されます。したがって、非業務執行取締役(NED)は、不公正解雇されない権利など特定の雇用権がありません。
海外会社の英国支店に非業務執行取締役(NED)がいるメリットはありますか?
これは、海外グループ会社によって異なります。親会社の取締役会に既に非業務執行取締役(NED)がいる場合、戦略的な観点からは当面は非業務執行取締役(NED)が必要ないかもしれません。しかし、もし親会社が英国に進出したばかりである場合や、親会社の国の市場と英国市場とでオペレーションが異なる場合には、非業務執行取締役(NED)は、特に親会社本社から出向している経営陣には不足しているかもしれない高レベルの価値あるアドバイスを提供することができる可能性があります。
ご質問がある場合や、非業務執行取締役(NED)の選任に関するアドバイスをご希望の場合には、弊所までご連絡ください。