最近出たEquitix EEEF Biomass 2 Ltd v Foxに関する裁判例では、事業譲渡の際のWarranties(表明保証)の目的と効果に対して注目が集まりました。この事例では、事業の売り主による表明保証の内容に虚偽があったことが明らかになり、損害賠償請求が行われました。損害賠償金額は、虚偽の表明保証によって生じた企業価値の減少分(すなわち、虚偽の表明保証に基づいて支払われた金額と当該会社の実際の価値の差額)に基づいて計算され、売り主に対し、金額にして1,100万ポンドの損害賠償責任が認められました。

Warranties(表明保証条項)とは?

Warrantiesとは、売却の対象となる会社や事業の状況に関する契約上の表明、保証のことです。通常、譲渡契約書のに詳細に記載されます。

表明保証条項のほとんどは、通常の事業会社のあらゆる側面をカバーすべく標準化されています。標準的な表明保証事項としては、例えば売り主が対象株式に対して正当な権限を有していること、対象会社が資産に対して正当な権限を有していること、また、対象会社が訴訟を抱えていない、といった内容が含まれます。

しかし、対象会社に関連する固有の表明保証が求められる場合もあります。 例えば、対象会社が規制事業を行っている場合、買い主は対象会社に適用される特定の規制制度に関する詳細な表明保証を求めるかもしれません。

なぜ表明保証が必要なのか?

英国法に基づく株式取得においては、caveat emptor(buyer beware)(危険負担の債権者主義(買い主は注意せよ))の原則が適用されます。つまり(詐欺がない限り)取得する資産や責任の性質や範囲に関して、買い主を保護する法律はありません。このため、契約上、詳細な表明保証が必要となるのです。

表明保証がある場合でも、デューデリジェンスは必要か?

対象会社に対してデューデリジェンスを行うことは常にベストプラクティスであり、表明保証は 決してデューデリジェンスを代替するものではありません。 むしろ、表明保証とデューデリジェンスは互いに補完し合うべきものです。買い主としては、買収後に(何か問題が判明して)損害賠償を請求すより、買収前に問題があるかどうかを認識しておくに越したことはありません。 

表明保証に反する事実が判明した場合の対応は?

表明保証に反する事実が判明した場合に生じうることとして、主に三つの可能性が考えられます。 

まず、(契約交渉中に)表明保証の対象となっている事実・内容が不正確であることを売り主が認識した場合、売り主はその事実を買い主に「開示」することができます。 つまり売り主は、そのままだと表明保証違反となるような特定の事実を公式に開示することで、表明保証違反を避けることができます。この場合、一般的な表明保証事項には影響なく、開示された事項のみが表明保証の対象から除外され、買い主はその特定の事項についてその後表明保証違反であるとしてクレームすることは出来ません。

二点目として、買い主は、表明保証違反が生じた場合に備えて、それによって生じうる損失を埋め合わせるためのIndemnities(補償条項)を入れるように求めることができます。あるいは、対象会社を買収する前に問題が判明した場合は、買い主はその問題の程度に応じて合意された売却価格の再交渉を求めることも可能です。

三点目として、取引完了後に問題が判明した場合、買い主は売り主に対して、表明保証違反に基づいて損害賠償請求権を有することになります。

Indemnities (補償条項)とは?

Indemnitiesとは、(取引後に)特定の種類の責任が(買い主に)発生した場合に、買い主にその分を補償することを約束するものです。事業買収における補償条項の目的は、特定の事象または事項に関するリスクを補償する側に移転し、補償される側がその事象または事項に関して負った損害額をそのまま回収できるようにすることです。補償条項は、表明保証条項では買い主への賠償ができない場合によく使われます。例えば、契約に署名する前の時点で、買い主が問題となる事項を認識している場合などです。

表明保証条項に関する交渉はよくなされるのか?

表明保証条項は近年極めて標準化されてきているため、交渉は以前よりは少なくなりましたが、依然として行われています。売り主は、財務予測や買い主が対象会社を買収した場合の影響に関する表明保証など、将来予測に関する表明保証条項については、削除を求めたり内容を和らげようとする傾向にあります。

表明保証条項を修正する際によく行われるのは、(少なくとも一部の)表明保証事項について、売り主の認識を条件とすることです。このような場合、売り主が単に問題を無視し、責任を回避することができないように、買い主としては、この場合の「売り主の認識」には、主要な人物(株主でない取締役など)の認識も含まれる、とするよう求めていくことになるでしょう。

売り主は責任を制限することができるか?

はい、売り主には、その責任にいくつかの制限が設けられ、またその他の保護が与えられるのが通常です。

一般論としては、売り主は売買価格を上限として責任を負うことが通常です。また、個々の少額の損害賠償求や累積的な損害賠償請求について、その金額を超えない限り請求できないとする下限金額を設定するなどといった方法もあります。

一方、補償は、特定の、かつ数値化することが可能な損失に関してなされることが通常であるため、売り主の責任限定の対象から除外されることが一般的です。

3CSにできること

企業買収における表明保証や補償の問題について、法的なアドバイスが必要な場合、3CSの担当者までご連絡ください。

Keith McAlister

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